注)オチはどうしようもないギャグです。期待しないで下さい。





新年の誓い



 「ふふふふふ」
 新年早々ビデオを見ながら、斉木がかなり不気味な笑みを漏らした。
「斉木さん、悪いんですけど、気味が悪いですよ」
 ソファに並んで腰掛けていた芹沢が、さすがに上体を引いて言った。
 無理からぬことではある。
 しかし、芹沢に結構冷たい視線を投げかけられても、斉木は一向に気にならない風だ。
 ご機嫌な声で答える。
「これが笑わずにいられるか」
 言いながら、さっきまで見ていたビデオを巻き戻す。
「天皇杯で初戴冠だぞ。嬉しいに決まってる」
 そう、今年の天皇杯、彼らのチームはガチガチの本命チームを逆転試合で倒し、優勝したのだ。
 この勝利は、来期への自信になる。
 誰もが番狂わせと呼ぶその試合だったが、それだけではないことは――一回勝負のトーナメント戦では多かれ少なかれ運に作用される部分があるのは当たり前だ――自分達が一番よく知っている。
 自分達のやってきたことは間違いではなかったのだと、全員が確認できたことが何よりも重要なのだ。
「お前も嬉しいだろう、嬉しいに決まってるなっ」
 拳を握り締め、笑み崩れる斉木を前にして、芹沢も微笑み返す。
 しかし、どちらかと言うと、天皇杯優勝そのものよりも、無邪気なまでに喜んでいる斉木を見ていることが嬉しいような気もするのだが。
 そんな芹沢の前で、
「よし、これで今年の目標は決まったなっ」
 斉木が宣言した。
「今年の目標はリーグ制覇だ!」
 さすがに。
 芹沢は男にしては大きな目を更に大きく見開いて、まじまじと斉木を見つめた。
「・・・何だよ」
「本気ですか、斉木さん」
 一発勝負のトーナメント戦とは違い、長丁場のリーグ戦を勝ち抜くには、それなりに安定した戦力が求められる。
 何しろリーグ戦の場合、自分達が勝ち続けるだけでは駄目なのだ。他のチームが負けてくれないことには勝負がつかない。
 その意味ではJ1には巨大戦力を抱える2強が控えており、層の薄い斉木達のチームが出し抜くことは難しい。
 だが、
「俺はいつでもサッカーは本気だぞ」
 斉木は真顔で答えた。
「とにかくどっちかのステージで優勝すればチャンピオンシップに出られる。だから、他のチームの戦力がまだ安定していない1stステージが狙い目だ」
 常々問題を指摘される2期制であるが、戦う側にしてみればチャンスが増えるのは間違いない。1期制は分かり易いだろうが、その代わり、層の厚いチームが圧倒的に有利になるのは否めない。
 問題があろうとなかろうとそれがルールであるのなら、最大限利用するまでだ。
 斉木達のチームには、絶対的に層が薄い。こうやって勝利を重ねて行くことでしか、層を増すことは出来ないのだ。
 だが、真面目も真面目な顔で語る斉木を、うかつにも芹沢は、かわいい、などと思ってしまった。
「1stステージで優勝して、2ndステージは戦力を整えてチャンピオンシップだ。そのつもりでいろよ」
 そう、迫られて。
「わっ、何を・・・っ」
 思わず抱き締めてしまっても仕方がないだろう、と、芹沢だけが思っている。
「だって、斉木さん、かわいくて」
 正直に言うと、耳を思い切り引っ張られ、思わず腕を緩めてしまった。
「いててててててっ」
「俺は本気なのに、茶化すんじゃないっ」
 緩めた隙に脱出されてしまい、芹沢は涙目で耳を押さえて訴える。
「ひどい、俺だって本気なのに」
「嘘つけっ。コケにしやがって・・・」
「してないって、ホントに、マジで」
「じゃあ、お前の今年の目標言ってみろよ」
 ビシィッと指を指され、芹沢がしばらく首を傾げて考えて真顔で言ったのは。
「今年こそ、斉木さんと四十八手制覇?」
 ぴし、と、空気が音を立ててひび割れたような音が斉木には聞こえた。
 が、芹沢はそんなことは知らぬげに、邪気がなさそうな笑顔で斉木に迫ってくる。
「そうですよね、トーナメント中はそれどころじゃなかったし、終わった後も俺、取材でてんてこ舞いだったから、ずっと斉木さんに触らせて貰ってないですもんね」
「え、遠慮するっ、俺はそんな目標持ってないから!」
 ずいと迫られて、斉木は慌てて立ち上がり逃げ出そうとしたが、相手は日本人離れした手足の長さを誇る芹沢だった。
 走り去られるより早く腕を目一杯伸ばして背後から斉木のシャツの裾を掴み、引き寄せる。
「せっかくだから、早速一手」
「わーっ、バカバカバカッ、もう俺は30の大台に乗ったんだ、そんなことしたら死ぬから止せ!」
 笑顔のまま組み敷かれ、斉木は必死で腕を突っ張り抵抗するが、そんなことが効く相手ではなく。
「だからこういう長期のオフにやるんでしょ。取材も落ち着いたことだし、せっかくだから普段は出来ないような難しいのやりましょうね」
 耳元で囁かれ、首筋に唇を落とされる。
「ぎゃーっっっ」
 断末魔の悲鳴は、完全防音の室内に響くばかりであった。





おそまつ。











す、すみませんっっ(平伏)。
新年早々死ぬほどバカなもの書いちゃいました・・・。
いや、これも相当初期からあったネタなのですが、本当にオバカネタなので、今まで手をつけなかったのですが、昨年中に斉木と芹沢がいるチームのモデルを他に適当なチームがないのでサンガにしようと心に決めた途端、サンガが天皇杯優勝してしまったので、ついつい・・・。天皇杯優勝のエピソードは、後でもっとまともなネタとして取り上げたいと思っています、はい。
あー、元々は、一度もそういうのやったことがなかったものですから、記念のフリー配布小話のつもりで書き始めたのですが、すみません、又の機会に。
こんなのフリー配布にしたら末代までの恥です(爆死)。
なので、お持ち帰りは勘弁して下さい・・・そんなの書くなよ、自分・・・(涙)。
それでは、いきなり新年早々すみませんでした。
こんなお馬鹿な管理人ですが、どうぞ今年もよろしくお願いします。

夕日








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