「いやああああっっ――――――――――――!!!」


闇を裂く悲鳴。
男たちに囲まれ、少女が叫ぶ。


「ヒューヒュー!」


ドルゥゥウウウン―――――ドルゥゥウウウン――――――――
ゴゥゴゥゴゥゴゥゴゥゴゥ――――――


真っ暗な公園の一角で、何台ものバイクが一人の少女を取り囲んでいる。
その轟音を響かせ、いたぶるように周囲を旋回する。

少女はその身につけている制服から清凜高校の生徒だと分かった。
地元の高校ではなく、電車を乗り継いで1時間程かかる私立のお嬢様学校である。

いくら女の一人歩きが不用心とはいえ、時刻は未だ20時を回ったばかり―――。

人が寝静まる時間でもない。
とはいえ他に人通りはない。


少女を囲っている少年たちの数は優に10を超えていた。
そしてその誰もが、御馳走を目の前に興奮状態にあった。



「カノジョ〜〜、俺たちと遊ぼうぜ―――!!
 ケツに乗っけてやるからよ、一緒に天国までイこうぜ」
「さっさと輪姦しちまおう」
「ヒャッハ―――――――!!」



二人の少年がバイクから降り、少女へと近づいた。



「いやあああぁ―――――っ!!」



少女は叫ぶ。助けを求め。誰かがこの声に気付いてくれることを願い。

しかしその悲鳴は轟くバイクのエンジン音に掻き消されてしまう。
暗い中、無数のヘッドライトに囲まれた少女は、肉体は勿論、その表情まで完全にライトアップされている。

少年の一人が少女に抱きつき後ろから胸を掴み、乱暴に揉みしだいた。


「いやっ…いやぁぁ……」


もう一人の少年が少女の前に屈み込み、制服のスカートを捲り上げた。
赤いチェック柄が闇に映え、少年たちの劣情をそそった。


白い下着がヘッドライトに照らし出されると、少年から歓声が上がった。


少年は興奮を抑えきれずすぐに下着に手をかけた。
いっきに膝まで下ろす。
落ちるスカートを再度捲り上げる。


「マン毛、結構、生えてまーす!」


少女の陰毛を何度も引っ張りながら周囲の少年たちに声高に報告する。


「まーんげ!まーんげ!まーんげ!」


少年たちが意味のない合唱を繰り返す。


「ねー、お嬢さーん、処女ですかぁー?」


バイクに跨がった男が少女に問いかけた。

少女は答えない。
ただ状況に怯え、震え、首を振るばかりだ。

後ろの少年が制服の中へと手を伸ばし、ブラをずらして乳房に触れる。
何度も揉み、捏ねくり、そしてその突起を指で弄る。

体を捩り、必死に少年の手から逃れようとするが、外れない。
男の強靱な筋肉ががっちりと体を掴んでいる。


「いやぁぁぁ……」


足元では少年が陰唇を開き、指を挿れてきていた。

どうやったって逃げ場はない。
逃れられない。
抵抗しても敵うわけはなく、懇願しても聞き入れられはせず。


犯罪だ、人権侵害だなどと言ったところで、彼らにはなんの意味もなさないだろう。

自分の意志は完全に無視され、ただ彼らの性欲を満たすためだけに、肉体を蹂躙される。



少年がベルトに手をかけ、ズボンを下ろした。
その股間に、バイクの照明が堅くなったモノを照らし出す。


「いっちばーん!いっきまーす!」





これといった不幸もなく、平穏に、普通に、そして優等生として、

生きてきたのに、

突如、

男の欲望の餌食となって、

犯される――――――――――――





膣口に、男の先端があてがわれたのが分かった。





逃れられない。

初めてはすごい痛いって聞いた。





やだ、たすけて――――
























その時―――――――――――――――





「なんだてめぇ――――!!」



怒号が飛び、続いて、何かが激しくぶつかりあう音、呻き声、そして再び、衝突音。

バイクのヘッドライトが一斉にそちらを向いた。





「で、でけぇ―――…」


ヘッドライトに照らされ、闇の中に浮かび上がったのは優に2メートルはあると思われる人影――――、巨人だった。


その威容に少年たちは硬直し、息を呑んだが、男がたった一人であること、そしてその手に棒やバットさえ持たない丸腰だと知って威勢を取り戻す。
いくら体格がたいが良くても、人間一人でできることなどたかが知れている。
武器も無しにこの人数に勝てるわけがない。


「なんだてめぇは?関係ねーやつはすっこんでろ!!」


少年の一喝に男が静かに答えた。


「おまえらどこのもんだよ―――――?」


バイクのエンジン音が、少女の悲鳴さえ掻き消すほどけたたましく吠えているというのに、男の声はやけに明瞭に響いた。
音とは波であり、音波の物理的強度や振動数によって互いに影響し合う。
男はこんな状況・・・・・での発声に馴れているらしかった。


「あぁっ?なんか言ったかぁ―――!?」
「どこのもんだって聞いてんだよ?
 てめーら、誰の女に手を出したか分かってんのか……」
「うっせー、轢くぞコルァ!」





「ア"ア"ッ――――――!!!?
てめぇらここが輪高の縄張りシマだって分かってやってんだろうなッ―――!!!?」






それはまるで大気を震わす怒号だった。
大男が動いたと思った瞬間には一台のバイクが宙を舞っていた。

250ccの排気量をもつ中型バイクが、跨がっていた少年もろとも宙に浮かび上がり、そのまま数メートルも吹っ飛んだ。

その光景に、少女の初めての男になろうとしていた少年は震え上がり、その股間モノを極限まで縮めた。背後から少女の胸を楽しんでいた少年も逃げるようにして、自分のバイクの背へ上がった。

男がバイクを持ち上げて投げた―――のではなく、ただ蹴り飛ばしたに過ぎないと何人が気づいたか。


「クソ野郎が――――!!」


集団爆走に、輪姦、少年達は既にアドレナリン全開で――――、
その勢いに任せた少年の一人が思いきりアクセルをふかした。そしてそのままバイクごと闖入者へと突進する。
無論、生身の相手にそんなことをすれば無事では済まないだろうが、少年の知ったことではなかった。

が、彼のバイクは巨男の横殴りの一蹴に転倒し、激しく地面を転がりながら火花を散らし、やがて遠くの木にぶつかってクラッシュした。


「ひぃっ……、やべぇ、、あれっ、あいつっ、輪高の羅刹だぜ―――――!!」

「羅刹って――――……
 えっ、ってあれはただの噂じゃねーのかよ???」



「おい、やべぇぞっ逃げろッ―――!」



その一声を待ってましたと言わんばかりに、少年たちが一気にアクセルをふかした。
一目散にその場から逃げ出そうとする。



「待てよ」



待てと言われて待つ奴があるか、と誰もが思った。
しかし少年たちは皆止まっていた。

その声には凄まじい威圧感があった。
まるで上からのしかかられているような、巨大な手で首根を抑え付けられたられた気分だった。
恐怖に首をすくめ、おそるおそる男を振り向く。


「なぁ、シカトはいくねぇだろ?
 俺はどこのもんだって聞いてんだよ。
 オマエら、人の女に手を出しておいて、落とし前もつけずに逃げられると思ってんのか?」


どうして。
男に捕らわれているわけでもない。
待てと言われただけなのにどうして逃げられない。

逃げてしまえ逃げてしまえ、誰もがそう思いながら、アクセルを踏み込めない。


羅刹と言われた男が少年たちの輪へゆっくりと入っていく。
歩き、そして少女の元へ。


蹲り震える少女の足下に屈み込むと、男は聞いた。



「助けて欲しいか?」



数十秒―――、少女はただ、あんぐりと口を開けていただけだった。
そしてようやくその言葉の意味を理解し、激しく首を縦に振った。



少年達が口にした、羅刹―――とは鬼の名ではなかったか。
鬼とは、悪いことばかりをする妖怪ではないのか。



しかし少女の目には今、彼が間違いなく救いのヒーローとして映っていた。



「た、助けてっ! お願いっ!助けてください!!」



少女は彼の腕にしがみつき、懇願する。

男は丸腰でたった一人。
囲むはバイクに乗り武器を手にした少年たち10人以上。

どう見ても不利な状況なのに、しかしその巨体は何とも頼もしく見えて。
ヘッドライトの逆光で表情まではわからない。



「処女か?」
「え?」

「処女か?」
「あ、はい」

「よし。助けてやる。礼に一発やらせろ」
「え?」



彼がなんと言ったのか理解できない。



「助けてやる代わりに、一発犯やせろって言ってんだよ」
「え…? ええっ…?」



少女が黙っていると男は更に続けた。



「考えても見ろ。こいつら全員に輪姦されるより、俺1人で済んだ方がマシ・・・・・・・・・・・ってもんだろうが?
 違うか?」
「そんなの……、そんなのっ………」
「どっちもいや、とか言うなら、俺が犯ったあとこいつらに輪姦させる」



鬼だった。
まさしく鬼だった。

男と少女との会話を聞きながら、少年たちは誰も動かなかった。
男はのうのうと話しているのに、その背後から攻撃しようという気すら起きない。
先ほど、バイクごと突進して地面を転がった仲間の姿が目に焼き付いていた。



「いやっ、いやぁっ……」
「いあか? じゃあ全員、だな」

「いやっ、それだけはっ、いやっ………、わかり…ました………」

「よし。和姦成立・・・・
 さてと―――――」


男が立ち上がる。
その姿はまるで大熊が前足をあげ、2足で立ち上がったように見えた。



「ひっっ―――――」 



少年たちが怯える。





「よく覚えておけ。
この辺の女は、全部俺のもんだ―――――――」





オオオオオッッ―――――――――――――――ガガガガンッ!!!!!





それは空気の切れる音。
そしてぶつかる音。

男が少年が乗ったままのバイクの腹を思い切り蹴りあげたのだ。
重量200キロはくだらないはずのバイクは倒れるではなく、宙を舞っていた。
少年をその背に乗せたまま、隣のバイクへと突っ込んだ。

ぶつかられたバイクが倒れ、更に隣のバイクへぶつかり転倒する。

一蹴りで3台―――……



「とっとと失せろ―――」



待ちに待った男の命令、いや許可を頂き、少年たちは我先にと逃走を始めた。
バイクの背から放り出され地面に呻く少年たちも、愛車を放置したまま慌てて立ち去っていく。

男は転がったままエンジン音を響かせるバイクのキーを抜き、乱暴に一カ所に纏めた。




















静けさの戻った公園に残されたのは、巨人と、怯える少女と、闇。





男は怯えている少女を軽々と抱き上げると、草むらへと連れ込んだ。



「いやっ、いやぁっぁ………」



しばらくの間、か細い少女の抵抗する声と、そして泣き声と、





「フッ―――フッ――フッ―――――………
 おぉおぉぉぅぅ―――――………」




















10分後――――――…





ズボンを上げ、ベルトを締めながら大男が草むらから姿を現した。
夜目には分からないが、とってもすっきりした表情をしていた。


「クゥゥ―――、やっぱ処女だな――――……。
 おい、女。これやるから飲んどけ。
 緊急避妊薬モーニングピルな。
 あと夜、女の1人歩きは危険だからやめとけよ。
 今回はたまたま俺がいて助かったからいいけどな――――はっははは――――」


男は、まだぐったりと横たわったままの少女に一粒のカプセルを放り、口笛を吹きながら立ち去っていく。


















































「随分ご機嫌だね。あんたが羅刹・・かい?」





突然、彼の背後から声をかけた女がいた。































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