その日、みことは学校を休んでいた。
担任が朝のHRで彼女の病欠を告げていたので、俺は早速お見舞いメールを打った。
すぐに「本当は風邪じゃないの。生理痛が酷くて――――」と返信がきた。
だから普段はみことと悠理と3人で食べていた昼食を、2人だけでとることになった。
「みことって昔から生理痛酷いの?」
「あー、うんうん。
みことは昔からそうだねー。聞いてて可哀想なくらい」
「みことと悠理はつきあい長いんだよね?」
「うん。小2の時からずっと一緒〜〜」
「悠理は平気なの?」
「うん?何が―――?」
「生理痛」
「私もそれなりだけど、みことほどじゃないかなぁ…。
せつらさんいいよね。まだ生理が無いなんて羨ましい……」
「あは……」
「今すぐ子供産むわけでも無いのにさー、やんなっちゃうよ―――。
生理くるのは別にいいんだけどー、せめてハタチを過ぎてからにして欲しいよね。
それか初えっち以降とか?(笑)」
「それは一理あるね(笑)」
「いい?生理痛の時にいいのはとにかく体を温めておくこと!
体を温めるのが何よりも効果的なの!」
「うんうん」
もぐもぐ。
「そういえば、みことってあんなに明るい性格なのに、
あまりクラスの男子と話してるとこ見たことなような―――……」
「みことは男子苦手だからね、思い切り避けてるし」
「苦手なの?」
「みことってちょっと天然なとこあるでしょう?
あの性格であの容姿だし、昔よく男子にからかわれてね。
まあからかわれたて言うより、好きでちょっかいをだされてたって感じなんだけど。
それに―――――……」
「……?」
「せつらさんなら教えても大丈夫かなぁ…?
他の人には絶対言ったら駄目だよ?」
「うんうん」
「最近話題になってるけど、ここの3年に、羅刹っていう不良の大将がいるのね」
「あ―――――分かった。もういい」
「あ、うん」
もぐもぐ。
「ねぇ、みことってさ、」
「もう、せつらさん、さっきからみことのことばっかり!
みことみことみことみことって……
―――――あ、まさか!!
もしかしてみことにほ・の・じ?」
「ほの字?」
「やだ。ほの字って死語?」
「う、うん―――?」
「惚れちゃったの?ってこと」
ブッッッ――――――!!
「ち、ちがっ、そんなんじゃないってば――――!
それにほら、女の子同士なんだし!?」
「ご飯粒――……思い切り顔にかかったんだけど―――……」
「ごめん。。。」
「そういえば、せつらさん昨日の抜き打ちテスト、凄い良かったでしょ!?
前の学校結構偏差値高かったんじゃないの?」
「あー、たまたまだよー」
「またまたー」
「せつらさんてー、いい声してるよね。
私少し低いじゃない? だから羨ましい……」
「そんなことないよ。私、悠理の声好きだよ」
「え?ほんと?うれしー」
以前の俺からは想像もつかない。
あまりに穏やかで、幸せな学校生活が、静かに、
しかし足早に、過ぎていく――――――……
このまま羅城せつらとして生きていくのもいいんじゃないか――――
か――――……。
その日、ついに輪高の生徒が他校生に暴行される事件が起きた―――――――――
第10話:日常
終わり