結局、それから5分待っても奴らは携帯に出なかった。
桧山たちがみことを拉致してから既に20分近く経過している。


奴らは車で移動している。
早ければもう荒渡たちと接触していてもおかしくない。





俺はすぐにでも荒渡に宣戦布告し、桧山たちの交渉を妨害したかったのだが、その前に一度、空見が提示した案に載ることにした。

それは当初から、空見が考えていた計画だった。
“羅刹”が消えてから既に2ヶ月。
タイミングを逃した感は否めない―――が、試すだけならタダだ。


空見が荒渡にコールし、携帯を俺へと渡した。
数回のコール音、そして―――――


『何のようだ?』
「荒渡か?」

『女―――? おまえ空見じゃないな、誰だ?』
「俺は今、輪高の頭張ってる、羅城せつらってもんだ」

『羅城……せつら――――――?』
「荒渡、おまえのことは“兄”から聞いてる。
 ちょっとおかしな噂を耳にしてね、あんたらがうちに楯突こうとしてるって。
 それが本当かどうか聞きたいんだけどね」

『――――――――――』


沈黙。
返事はない。


(さあ、荒渡、どうでる――――――!?)
 

『……………少しおかしな話だが』
「何がだ?」

『今し方、あんたんとこの桧山から連絡を貰ってな。
 奴の話じゃ羅刹さんはどこかへいっちまったそうじゃねーか。
 もう2ヶ月近く姿を見せてねぇんだってなぁ?』
「それがどうした?」
 
『奴が言うには、“これから羅城せつらを手土産にもっていくから、俺らと話し合いたい”ってな。
確かに桧山も羅刹さんの妹・・・・・・だと言ってはいたが、これはちょっとおかしな話じゃねぇか、なぁ?』

「それは俺の偽物だ」

『じゃあ、あんたが羅刹さんの妹だって信じさせてくれねぇか?』

「どうすればいい?」

『簡単な話だよ。
 羅刹さんから一言貰えればいい。そうすれば信じる』



やはり、そう、きたか……。
それは当然の要求。
無論、そう言われるのは予想していた。



「兄は今いない。だが俺が呼べば飛んでくるぞ?」

『別に会わせてくれって言ってるんじゃねーんだよ。
 電話でいいんだよ。
 それくらいならどんなに遠くにいてもできるよな?
 それで構わないって言ってんだよ』


どうやら荒渡はもう、羅刹の不在を確信しているようだった。


「じゃあ俺の言うことは聞けねーっつぅんだな?」
『羅刹さんから一言貰えねー限り、聞けねーな』

「てめぇ後悔すんぞ?」
『用件は済んだか?』

「今からてめぇをぶちのめしにそっち行く。
 桧山が連れていく女は羅城せつらじゃねぇ、絶対に手を出すな」
『それは約束できねぇなぁ。
 どのみち桧山も灰刃も袋にはしてやるが、女は色々と使い道があるからな』
「ぶち殺すぞ!ゴルァァァ―――――!!!」


携帯に思い切り叫んだら、横から空見に取り上げられた。


「そういうわけだ荒渡。
 輪高は今一度、征関を潰しにいく」
『空見か――――。
 上等だ。今まで散々でけぇツラしやがってよ………。
 せいぜい人数かき集めてこいや―――――――――』




―――――――――プ――――ップ――――ップ――――




通話が切れ、空見はすぐに桧山と灰刃の携帯にコールする。
が、出ない。










そして彼は、悪鬼メンバー全員に緊急招集メールを一斉送信した。



















































第19話:救出!
終わり

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  第20話:姦策
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