白――――――――――――――――
気がつくと、真っ白な部屋にいた。
「う……うぅん………」
体が酷く怠い。
なんとか起きあがろうとすると、体中の関節が軋み、悲鳴を上げた。
朦朧とする。
今、何をしているのか、何をしていたのか、思い出せない。
まるで何年も寝続けていたような―――――……そんな感覚。
天井も白 カーテンも白 シーツも白。
ベッドの横に置いてある透明な袋からチューブが伸び、腕に刺さっている。
点滴――――……
病院なんだなぁ…、と思った。
(…………、どうしたんだっけ…………)
ベッドから降り、カーテンをそっと開けると、窓越しに外の景色が見えた。
また、白―――――
外には一面、雪が積もっていた―――――………。
窓越しに見える、すぐ近くの木に葉は無く、茶褐色の幹と、細い枝を寒そうに曝している。
広く、白い、病室。
ふと、室内に設置された洗面台の鏡に、一人の少女が映っているのに気付いた。
綺麗な、少女だった。
長い黒髪の、病的なまでに肌の白い――――、少女。
あれは―――――わたし?
私は再びベッドに戻り、ただぼーっと外の景色を眺め続けていた。
小さな雪の一欠片が、窓の上からゆっくりと落ちて、窓の下へ消えていく。
またひとつ。またひとつ。
どうして――――――――、病院にいるんだっけ……?
真っ白だった。
カーテンも 床も 壁も シーツも 外に降る雪も
そして私自身も―――――――――――――――