1月10日―――――――――





3学期が始まった。





「おはよ、せつら。五日ぶり」
「おはよ、萌」
「さーむーいー!」
「寒いね−><」





始業式、それからオリエンテーションがあって、あっというまに午前中が過ぎた。

今日の学校はもう終わり。
大晦日以来逢っていない先輩と、せめて一緒に帰りたかったけれど、図書室に籠もって勉強してから帰るというメールに、私は頑張ってねと返信する。


先輩は今日も勉強
明日も勉強
毎日勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強
勉強





本当は逢いたい。
でも今の私には図書室にさえ足を運べない。

先輩の邪魔はしたくないから。

センターまであと少し。
我慢、我慢。。。。





あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
逢いたいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!





見渡すと教室に残っている人はまばらだった。
まだ部活も無いので、皆早々に帰るか、遊びにいくかしたのだろう。



「はぁ――――……」
「せつら、なに溜息吐いてるの。
 溜息するたびに幸せ一つ逃げちゃうんだよ」
「あ、萌。
 大丈夫――――…
 これは幸せな溜息なはず、なの――――」
「なによそれ」



そう、これは幸せな溜息な、はず。


逢おうと思えばいつだって逢える。
だって私たちは同じ敷地内にいるんだから。
携帯でメールもできるし、しようと思えばいつだって会話できるんだから。

ああ、逢いたい、逢いたい、逢いたい。

すぐ近くにいるのに―――――、遠い。


でも大丈夫。
我慢した分だけ逢えた時の喜びは大きくなるんだから。





「あれ……、ね、萌。 あそこにいるのって、悠理じゃない?」
「え?どこ?」

幸せな溜息って何よと騒ぐ萌には答えずに、私は校門の陰を指さした。
が、すぐに隠れて見えなくなる。

「見えなくなっちゃった」
「用事あるから先帰るって急いでたし、違うんじゃない?」
「うーん……」


だれか男(?)と一緒にいたような――――――………。
気のせいかな。



「せつら今日このあと予定は?
 先輩とデート?」
「逢――え――な――い――の―――――――――――――………」
「そっかそっか。
 じゃあカラオケでも行く?」
「うー……、、、、いこっか!!」
「じゃあ急がないと混んじゃうかもね」



ほんとは先輩が頑張って勉強しているのに、私だけ遊ぶのはちょっと気が引けた。
でもそれこそ歌でも歌って気を紛らわしていないと、精神的に辛い。
ほんとに辛い。
ほんとにどうにかなってしまいそうだった。


「フリータイムでいこうよ。
 よーし、今日は歌うぞぉぉ!!」


といっても私はあまり歌を知らなかったりする。
記憶を失う前の私はあまり音楽に興味がなかったらしく、私の部屋には音楽CDはおろか、再生するための機器さえ無かった。

だから最近では携帯で曲をダウンロードして聴きまくっている。
一番はまっているのはKOKIAだけど、悠理や萌に勧められた曲も見境無く聴いている。

最近ではレパートリーも増えた。
一杯歌って練習しなくちゃ。

以前、一度だけ先輩とカラオケにいった時に、真っ正面から音痴と言われてしまったのだ。


だからいっぱいいっぱい練習して、次に行った時には絶対絶対、私の歌音に聞き惚れさせてやるんだからあぁぁっ―――――!!!!!




















だれか〜〜  くう〜〜〜  りんかくを〜〜〜〜〜〜〜
そっと〜〜〜   てくれないか〜〜〜〜〜〜



「はぁぁっ……はぁ……」
「すごいすごい、せつら熱唱じゃん。
 っていうか、めきめき上達してるし」
「え?上手くなってきてる?」
「うんうん。少なくとももう音痴では無いよ」
「やった♪」


ずずず――――、渇いた喉にメロンソーダを流し込む。


「あ――、歌うのって凄い気持ちい〜〜!!」
「気持ちいいといえばさ、どうなの実際。
 教えなよ」
「え?なにが?」
「空見先輩とだよ、どこまでいったの?」
「もぅ。また下ネタ?」
「いいじゃん、うちら二人しかいないんだからさ」
「うーん……、その……最後まで……」

「萌、曲始まってるよ?」
「いいのいいの。
 ちゃんとゴムはつけてる?」
「うん、まあ」


最初だけはつけなかったけど。


「フェラはしてあげた?」
「ちょっと、萌〜〜〜、曲始まってるってば―――」
「いいんだって」
「ぶー。」

「せつらは、先輩を喜ばせてあげたいと思わないの?」
「え――――…、そりゃ勿論、喜ばせたいけど……」

「で、フェラは?」
「ううん」

「じゃあ精液も飲んであげてないの?」
「う、うん……」

「あちゃー……駄目だわ、全然駄目だわ」
「駄目……って―――………」

「あのねぇ、フェラくらいしてあげないと愛を疑われるよ?」
「疑われる?」

「俺のことあんまり愛してくれてないのかなぁってこと。
 男だってそういうので不安になるんだよ?」
「えええ―――……」

「そんな手抜きしてると浮気されちゃうかもよ?」
「別に手抜きなんかしてないし、空見先輩は、そんなこと絶対しないもん」



私は少しムキになり、制服の胸元に隠すように下げていた指輪を取り出した。



クリスマスイブ―――――――…
先輩と初めて結ばれた日に貰った婚約指輪。
流石に薬指につけて学校に行くわけにもいかないので、ネックレスにして身につけているのだ。

素早く外し、薬指につけ、萌の前に突き出す。


本当は見せびらかすつもりなんか全く無かったけれど。



でも空見先輩は絶対浮気なんかしないんだから―――――!!!



「なにそれ?」
「なにって……、婚約……指輪―――――………」

「えっ、せつら、求婚されたのっ――――――――――――――――!?」
「うん」


勢いに任せて言ってしまったけれど、途端に恥ずかしくなる。


「すごーい! へぇ……空見先輩やるなぁ……せつらおめでとう!!」
「えへ――――、ありがとっ♪」

「でも、だったら尚更、かなぁ?」
「だからぁ――――、先輩は浮気なんてしないってば!」

「分かってるよ。
 空見先輩は浮気しない。でもそこが問題なんだよ」
「どういうこと?」

「つまり空見先輩の性欲は全部せつらが面倒みなきゃいけないの。
 せつらが全部受け止めてあげなきゃいけないんだよ」
「………」

「せつらさー。
 一方的に愛されてない?
 一方的に大事にされてない?」
「いっぽうてき………?」

「普通は、誰でも大切にしたら、相手にも大切にされたいって思うもんだよ」
「うん……」

「舐めて欲しいって言われなかった?」
「言われてないよ」

「そっかぁ、空見先輩って、結構淡泊なのかな?」
「そんなこと無いと思うけど……」


萌がにやりと笑った。
って、そんないやらしい目で私を見ないで欲しい。


「っていうか今、何度目?」
「まだ……、2回しか……」

「え?2回!? まだ、たった2回!?
 それ、ほんとに?
 そっか、そっか………、ごめんね、まだこれからかぁ……。
 先輩、受験勉強で忙しいもんねぇ」
「うん」

「逢いたいね、ヤりたいね」
「もぉ、萌はぁ――――……」

「でもさ、向こうからフェラして欲しいって言ってきたらしてあげた方が良いと思うよ。
 そういうの断られると男って傷つくっぽいし」
「そうなんだ」

「指導してあげようか?」
「要らない………。
 っていうか萌は?
 萌はどうなってるの!?
 私のことばっかりじゃなくて萌のことも聞かせてよ!」

「私はいいの!」
「今は彼いないんでしょ?
 なんでそんな詳しいの!?」

「私はいいんだってば〜〜〜〜」

「ず〜〜〜る〜〜〜い〜〜〜よ〜〜〜〜〜」



「あ、ほら、せつら歌の練習しないと」





「ず〜〜〜る〜〜〜い〜〜〜よ〜〜〜〜〜」



















































第33話:始業式
終わり

: : : : :

: : : : :

  第34話:自慰
― ―― ―――――――――――――◇――――――――――――― ―― ―
<- BACK -

: : : : :

: : : : :

メインページへ戻る

: : : : :

: : : : :