実を言えば、私は萌の話に興味津々だった。
フェラの仕方とかもほんとは聞いてみたかった。
それに彼女の経験も。
でも今まで、そういったことにあまり興味が無かったのも事実で、それにそんな話を友人とするのも恥ずかしく、私はこれまでに作り上げた自分像をそう簡単に壊すことはできなかった。
実際には空見先輩とは2回しかまだえっちをしていない。
でも私の中ではこの2週間の間に、もう何十回と先輩と繋がっていた。
お正月、結婚に失敗した感じの(どうやら私のお母さんは死んだのではなく、お父さんに愛想を尽かして出て行ってしまったらしい)お父さんはただの一度も親戚に会いに行こうなどとは言わなかったし、時々一緒にご飯を食べに行くくらいだった。
冬休み、家事以外にすることはなく、先輩とも逢えず、特に出かける用事もなく、家に籠もってばかりの私は、先輩に恋い焦がれるあまりにすっかりオナニーを覚えてしまったのだ。
妄想の中の空見先輩との僅かな逢瀬を重ねる度に、私はどこまでも上り詰めてしまう。
だってだって……、恥ずかしいけれど、先輩とするのは、本当に気持ちよくて……。
先輩の筋肉質でがっしりとした胸や腕はほんとに堅くて、凄く頼もしくて、触れているだけでドキドキしちゃって、きゅんってなって、濡れてきちゃって、もう愛しくて、愛しくて、ずっと舐めていたいくらいで、
ああ、私、何言ってるんだろう。
(あっ――――……)
先輩のことを想うと、胸が、そして体が熱くなってしまう。
きゅぅんとして、思わず手が伸びてしまう。
んっっ―――――……
はぁっ……はぁっ……
婚約したんだから、もう名前で、飛鳥って呼んでくれって言われて、
恥ずかしいから、先輩が卒業するまでは待ってって言ったけど、でも、
「飛鳥っ、飛鳥ぁぁぁっ――――――――――」
一人でする時は彼の名前を呼びながらしてしまう。
飛鳥のことを考えながら私は自分で弄ってしまう。
飛鳥に触れられていることを想像しながら、感じてしまう。
「飛鳥っ、イくっ、イクゥぅぅぅ――――――――――――――!!!」
はぁぁっ……はぁっ………
もう何度目になるかわからない、オナニー……。
想像の中で、勝手に飛鳥を使ってしまって罪悪感はあるけれど、
飛鳥のことが欲しくてたまらない。
私の妄想は日を増すごとにどんどんエスカレートしていく。
自分でも怖いくらいに。
私は初めて知った性の快楽に溺れてしまったのかもしれなかった。
雑誌の中でのセックスに書かれたページを何度も読み返した。
そこにはフェラの仕方や男の喜ばせ方なんかが書いてあるのだ。
実際にはしたことはないけれど、妄想の中では、もう幾度となく飛鳥のおちんちんを舐めている。
すぐにえっちな話題に走る萌を私は窘めるけれど、本当はそんな資格なんてない。
私の頭の中は飛鳥のことで、飛鳥のおちんちんで一杯だった。
それどころではない。
私は自分が、まっとうな道を踏み外しつつあることに気付いていた。
なにしろ今、一番オナニーのオカズとして使うのは先輩の“言葉”なのだ。
大晦日に繋がった時、「2回目でこんなに感じるなんてせつらって淫乱の気があるのかな?」と先輩に言われ、その時私は「そんなことない」とちょっと怒ったけれど、でも今となっては、その言葉こそが最高のオカズになってしまっているのだ。
「せつらって淫乱女だったんだな」
飛鳥が冷ややかに言う。
まるで汚いものでも見るような目つきで私を見下す。
ゾクゾクッ―――――――
あの優しい飛鳥が、そんなことを言うはずがないと分かっていても、でもだからこそ、その言葉が胸にくる。
あのいつも私を大切に愛してくれる飛鳥が、私を汚らしく罵って虐めてくるのだ。
「ああんっ!」
まだたった2回。
先輩とはたった2回しかしていない。
2回しかしていないのに。
先輩は男の子だからほんとはもっとえっちがしたいはずで、でも今は勉強を頑張ってて、
その間に私は一人勝手に歩き続けてしまっている。
そのことに罪悪感はある。
でも止められない。
私はまるで発情した猫みたいに、家で独り、あそこを弄り続けている。
「飛鳥、飛鳥、飛鳥、飛鳥ぁぁぁぁ―――――――――――!!」
妄想の中で勝手に先輩を犯してしまっている。
ああもう、飛鳥にめちゃくちゃにされたい。
飛鳥をめちゃくちゃにしてしまいたい。
飛鳥をいっぱいイかせて、びくびくってさせたい。
ああ、飛鳥のおちんちんを舐めたい……。
飛鳥が気持ちよくなるなら、なんでもしてあげたい……。
『つまり空見先輩の性欲は全部せつらが面倒みなきゃいけないの。
せつらが全部受け止めてあげなきゃいけないんだよ』
『せつらさー。
一方的に愛されてない?
一方的に大事にされてない?』
『普通は、誰でも大切にしたら、相手にも大切にされたいって思うもんだよ』
私だって飛鳥が大切。
私だって飛鳥のことをこんなにも想ってる。
だからいつでもどこでも、飛鳥が求めるなら、私は―――――………
今は大切な時期で、勉強に集中させてあげないといけないのは分かっているけれど、
逢いたいよ……飛鳥……。
第34話:自慰
終わり