土曜14時――――――――――…





私は学校が休みで、今日は飛鳥は午前授業だけなので、昼過ぎからデートの約束をしていた。
空はすっかりと晴れ上がり、紫外線をたっぷりと含んだ太陽が肌を刺す。
気持ちよくも恨めしい日射しだった。

時間が経つのは本当に早い。
この前まであんなに寒さで凍えていたのに。
季節はもうすっかり夏――――、だった。





それは飛鳥を迎えに、輪光駅へ向かう途中、繁華街での光景だった。

私はすぐに手を挙げ、彼女の名を呼ぼうとして、固まった。





え――――――――――……!?





私は息を呑んだ。
見間違えるはずもない。


いや、でも、普段の彼女とは服装が違うし、もしかしたら別人かも知れないし――――
でもここまで背格好が似ていて――――


私は携帯をみて飛鳥との約束までもう少し時間があることを確かめてから、その集団の後を尾けた。





(違うよね、違うよね―――――?)



別人であって欲しいと願いつつ、それでもその女の子の顔がどうしても見えなくて、やがて彼らは通りを外れ――――…





その先に何があるのかは分かっている。
その通りには私も飛鳥と一緒に何度も入ったことがあるから……。





その集団が一つのラブホテルに入っていくのを見届けたあと、私はすぐに飛鳥にコールした。
どうしたらいいか分からなかった。



今すぐ飛び込んでいくべき?
でも私一人じゃ……。
警察に連絡した方が良いの?



すっかり混乱していた私は、悲鳴に近い声を上げていた。


「飛鳥っ? 今どこにいるの―――――!?」

『え?せつら、どうした?何があった?
 今、電車の中なんだが―――…』

「助けて!」

『せつら、落ち着け。
 何があった?』


「でも悠理が―――!!!」


『悠理ちゃん?……が―――――どうしたって?』

「変な人たちと一緒にいるみたいなの!」

『変な人たち?』

「あの、時々飛鳥と一緒にいた、不良っぽいひと!!」

『アズマ―――東江あがりえのことか?』

「うん、多分、その人に、無理矢理ホテルに連れて行かれたみたいなの!」

『無理矢理…?
 アズマと一緒なら、問題ないだろ?』

「どうしてよ!
 飛鳥!悠理を助けて!!」

『アズマと悠理ちゃんは付き合ってるんだからホテルくらい行くだろう…?
 え?聞いてない?』

「ええっ――――!?聞いてない……」

『あれ――――言っちゃまずかった?』

「ううん、そんなことない……」



あの悠理が?
あのどう見ても不良な東江と?
付き合ってる?


そんな馬鹿な―――――!!



「アズマ――――さんって不良じゃないの!?」

『まあ、不良だけど……、悪い奴だけど、悪い奴じゃないよ。
 せつらが意識不明で入院したとき、何度かお見舞いに来てて、
 そこで悠理ちゃんと知り合ったみたいだな』

「東江……東江……東江……、うーん、どこかで聞いたような………」
『俺の友達ダチだからな。
 名前くらいは聞いたことあるだろ』

「そんなんじゃなくて――――、もっと、別のところで耳にしたような―――……、
 ああ!思い出した!悪鬼の四天王の生き残り・・・・!」

『生き残りはよしてくれよ』

「あ、ごめん……、、」




ブツッ―――――プ―――――プ―――――……




突然、携帯が切れた。
輪光駅に向かう途中、一カ所だけ電波の途切れるところがある。
それはつまり、飛鳥がもうすぐ到着することを示している。





でもあの男と悠理が……、付き合っている――――!?

そういえば以前、校門のところで悠理の姿を見た時も、あの男が隣にいた気がした。

私が入院していた時知り合った―――………ってことは、もう半年前から!?

悠理が誰かと付き合っているのは気付いていたけど、まさかあんな男と!?





違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う、、、、
今、問題にしなくちゃいけないのはそんなことじゃなくって―――――――

二人が付き合っていて、二人でホテルに入っていくなら問題はないけれど、
悠理と一緒にいたのはあの男だけじゃなく・・・・・・・・・他に二人も・・・・・――――………

でもあれが本当に悠理だったのか、まだ確信がない。



私は自分の携帯を弄りつつ、あっ!と思いつき、悠理にコールした。
本人に確かめるのが一番だった。
が、何度コールを鳴らしてもでない。
すぐに留守電に切り替わってしまう。


(ううっ――――………)


私はそれ以上どうすることもできず、ホテルのすぐ傍の路地で立ち往生していた。










随分長いこと待った気がする。
やっと私の携帯が震えた。


「飛鳥っ―――!!」

『今駅に着いたよ、今ホテル前にいるのか?』

「うん、あのね、そうじゃなくて、違くて、3人もいるの。
 悠理を助けて!」

『落ち付けって、悠理ちゃんに電話はしてみたのか?』

「したけど、繋がらない」

『そうか。それで、3人いるって何が?』





悠理ちゃん・・・・・―――――!!!!

早く助けなくちゃ、何かしなくちゃ、でも何もできない、状況も分からない。
凄く焦っていて、混乱しているのに、飛鳥が悠理の名を呼ぶ度に、胸が締め付けられる思いがする。飛鳥の口から別の女の子の名前がでるだけで、凄いイライラする。

醜い独占欲。嫉妬心。

挙げ句、もう悠理なんて助けなくていいや――――なんてことさえ頭をよぎってしまって、、、
私は激しい自己嫌悪に襲われた。

悠理ちゃんじゃなくて、できたら飛鳥には"白井さん"って言って欲しいんだけど、
――――――ってそんなこと考えてる場合じゃなくて。



悠理は私の大切な友達だ。
絶対に助ける。

例え私自身に力は無くても、
絶対に飛鳥が力を貸してくれるから、

だから、
待ってて、悠理―――――――――――――……





「だからね、アズマさんの他に男が二人いたの」

『なるほど、それはアズマと悠理ちゃんに間違いないのか?』

「アズマさんの方は間違いなかった。
 でも悠理かどうかは、まだ―――……」

『じゃあいったん電話を切って、アズマの方に電話してみるよ。
 とりあえずその通りの入り口に向かうから待ってて』

「あ、うん、分かった。お願い」










飛鳥からのコールバックは来なかった。
5分ほどして待ち合わせ場所に直接飛鳥がやってきて………。


それから飛鳥の口からでた言葉を、私はどうしても信じられなかった。


私はただただ混乱するばかりで、「じゃあ同じホテルに部屋を取って見に行ってみるか?」と言われ、私は驚きとともにやっと一息吐いて――――、首を横に振った。






























今日は最初にカラオケに行く予定だったのが、私の精神状態が目に見えて悪い所為で、飛鳥が気を遣ってくれ、コンビニで少しばかり食事を買ってホテルで休憩をとることにした。



部屋に入るとすぐ、飛鳥の大きな腕が私を抱きしめた。
すぐに唇を求め合う。
暑さの所為でお互いに汗を掻いているにもかかわらず、服を脱がせあい、肌を求める。

ベッドにもいかず、ドアのすぐ傍で、私たちは殆ど全裸になっていた。
飛鳥が私の乳首を口に含む。
大きな手がもう片方の胸を揉む。




きゅぅぅん―――――――――……




飛鳥が屈み込み、私の腹にキスの雨を降らせる。
飛鳥が私の体を求めている。



あああっ……なんでこんなに気持ちいいの――――――――……



胸が、股間がきゅんきゅんする。



飛鳥の指が私の中へ入ってくる。
既に溢れている私を掻き回され、腰が砕けそうになる。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……、あすかぁ……」
「せつら……、可愛い……」
「飛鳥ぁ……」


私は堪えきれず、そのまま絨毯の上に飛鳥を押し倒した。
それから、飛鳥の胸板にキスし、そして更にその下へと降りていく。


既に手に飛鳥の硬い物を握っている。
そして今目の前に………。


すごい、造形だ――――と、思う。


とても卑猥、な形状。
見てるだけで恥ずかしい。

でも同時にとても愛しい――――…。


「せつら……」


私の下で飛鳥がはねた。



びくん。




飛鳥も興奮している。



私はそれに舌を伸ばした。
汗のせいでどこかしょっぱい、むわっとするそれに、夢中に舌を這わせる。


(はぁっ……はぁっ……はぁっ……)


飛鳥のおちんちん、美味しい………。


私は床の上で飛鳥のものを夢中で舐め続けた。

不意に飛鳥が私の頭を手で押さえつけた。
そして腰を動かす。

「んんぐぅ……んんっ……んんっ……」

飛鳥が私の口で気持ちよくなっている。
私の口で、イこうとしている。

しかし頭を押さえつけ、腰を打ち付けられて――――、
私は飛鳥に“口を使われてる”気がする。

でも飛鳥が、気持ちよくなるために使ってくれることが―――――
たまらなく嬉しい。
気持ちいいとかじゃなくて、嬉しい――――、幸せ――――だ。


「んんんっ―――――!!!」




ビュッ――――ビュッ――――ビュッ――――




私の口内に何度も何度も熱い粘液が迸った。


ごくん―――…ごくん―――…


精液……、飛鳥の精液……、

飛鳥の精液が喉を通る。



そして私の胃へ。

もう分からない。

覚えているのは喉ごし。

分かっているのはそれが確かに私の喉を通ったと言うこと。





私は飛鳥の精液が好き。
彼の精液を飲むのが好き。





それは今、本当に私の胃の中にあるのだろうか。


そして私の一部となってくれるのだろうか。




















私はこの人と一つに――――――――――――、





この人の一部になりたい――――……































激しく、何度も愛し合ったあと、私は飛鳥の胸に顔を埋めていた。
私の精神は大分落ち着いていた。





それからようやく、2時間ほど前の出来事を思い出す――――………



悠理……



「でも4Pなんて――――………」



そう口に出して、急に恥ずかしくなった。

すぐ近くのホテルで、まだしている・・・・・・のかも知れない……。



悠理が・・・男3人と同時に・・・・・・・―――――――――……



頭の中に、あの大人しい悠理が、男たちのものを次々に咥える姿が浮かぶ。



そんなのありえない。そんなのおかしい。
そんな非常識で、不道徳で、背徳的なこと――――……。
あの悠理が、そんなこと、自分からするわけ無いのに………。



「そればっかりは仕方ないんじゃないか?
 付き合ってる男女の問題だし、他人がとやかく言うのものね」
「でもっ…それはアズマ―――さんっ、がっ、無理矢理っ……!!」

「だからそれは無い・・・・・って言ってるだろ?
 言ってなかったかも知れないが、アズマは小学校からの付き合いでね。
 俺の親友なんだ。
 悪鬼の四天王でも俺が信用していたのは彼奴あいつだけだった」
「え……」

「俺たちあんまり話さないから、端からはそうは見えないかも知れないけど、
 これでも信頼関係は築けてるつもりだ」
「でもっ……」

「それにアズマが悠理ちゃんを口説いてるって知った時、俺はちゃんと釘をさしたからな。
 悠理ちゃんは、せつらの友達だから、遊びのつもりなら許さない、と――――」
「…………」

「確かにあいつはどうしようもなくスケベだ。
 はっきり言って変態だ。
 でも、それでも、悠理ちゃんがあいつのことを好きだって言うなら、
 俺たちはその気持ちを否定することはできないし、その権利もないよ」

「悠理が、好きなら……?」
「そう。それにせつらがもし、あいつが不良だってことを気にしてるなら…、
 それは俺も同じ、だから――――」



それは、分かる。
飛鳥は悪鬼の四天王だった――――、だから、飛鳥が不良だからという理由で、陰口を叩く人がいることを私は知っている。
不良だからやめた方がいいと、頼みもしないおせっかい・・・・・を焼いてくれる人までいる。


私も今、その人たちと同じことをしようとしているの……?


でもそれは彼らが飛鳥のことを知らないから―――……
そして私がアズマのことを知らないから―――……



でも飛鳥が親友とまで言うのなら、私は信用すべき――――……
私は飛鳥を信じているから――――





「悠理ちゃんが受け入れたなら俺たちがとやかく言うことじゃない。
 あとで、悠理ちゃんときちんと話してみたほうがいいな。
 もし悠理ちゃんが嫌々そんなことをさせられていたなら、その時は、
 必ず俺が何とかするから――――」

「うん……」



「あれ、せつら、機嫌悪い?」
「………」


「俺、何か、悪いこと言ったかな?」
「………」


「………、せつら?」


「……………」



「…………?」



「飛鳥が……、他の女の子の名前、呼ぶの、嫌……、
 ただの独占欲だって、分かってるけど……、苦しい……」


「もう。せつらは素直過ぎて、可愛すぎる………」

「うー……、飛鳥、好きっ…、愛してる……」

「俺もだよせつら」




















「ねぇ―――……、飛鳥も―――…、
 そういうの・・・・・したいって思うことあるの…?」

「いや、俺は別に。せつら嫌がるだろうし」

「ほんとに………?」

「ああ」










じゃあもし私が嫌がらなかったら―――――?










そう続けようとして、でも、言葉にできなかった。

そんなことを聞いて、もししたいと言われてしまったら私は―――――…


そんなこと、彼は望んでいないと、思うけど―――――、

望んでいるはずが無いけど―――――……、





望んでいるはずがない・・・・・・・・・・





それは、私の願望?





私は一体何を聞こうとしたの?





飛鳥がそんなひとじゃないと、信じたかっただけ?





彼のために、何かをしようとか、そんなことじゃなく、






























ただ、私の男は、悠理の付き合ってるような変態じゃない、と――――――――………、、、、





























































第43話:発覚
終わり

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  第44話:煩悶
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