「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」


私たちは、ホテルのベッドの両端で、少し離れて座っていた。


私は泣きたい気持ちで一杯で、でも泣けなくて……、
飛鳥はいつでも私を大切にしてくれていたし、私も飛鳥のことが大好きで、
いつでもお互いに思い遣っていたから、喧嘩らしい喧嘩なんて一度もしたことが無かったし、だからこんな状態になったのは初めてだった。


私は胸を締め付ける苦しさに一杯で、葛藤を続けていた。
このまま黙っていたらどうなるか、それは分かっている。
全て私の思い通りに・・・・・・・・・望んだとおりになる・・・・・・・・・
だって飛鳥が私を傷つけるはずがないから。
だから、このまま黙っていれば、彼は自分から辞退を申し出るに違いない。。


このまま黙ってさえいれば――――………




















「せつら、アズマと白井さん・・・・から申し出があったんだが――――」
「悠理から聞いた」

「そう、か」
「…………」

「せつらは、勿論嫌だよな?」
「…………」



訊いた――――!!

私に・・訊いた・・・―――――!!!

断って、いない。
飛鳥は、東江に、その場で断っていない・・・・・・・・・・


なんで。
どうして。


「せつら…?」
「………」


もう泣きそうで、ただ俯くしかなくて。
後ろから抱きしめてきた彼の腕を、私は振り払った。






























そして今の状態に至る。
もう何分、何十分こうしているか、分からない。

ホテル代が勿体ない。
本当は、飛鳥と繋がりたいのに。
愛し合いたいのに。

いつも、私の気持ちを優先してくれる飛鳥が、口を開かない。


これはどういうことなの?
どうしてその場で断らなかったの?

どうしてそんなこと、しないよって言ってくれないの?
飛鳥は何を考えているの?

私はどうして怒らないの?
どうして何も言わないの?
どうして何も訊けないの―――――――………



飛鳥は、私が東江に抱かれても平気なの…?
それとも飛鳥は、悠理としたいの…?





「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」





ただ、私たちの間に重たい沈黙だけが、流れ続ける。

辛い……。
せめて有線でもかけておくんだった……。




もう、どれくらい経ったのか――――………




私は葛藤し続けていた。

でも私が本当に葛藤していたのは、彼に対して怒っているとか、彼のことが信じられないとか、そんなことじゃなかった。

そんなことはどうでもよかった。

だって私は彼を信じていたから。
飛鳥はかならず、断ろうって言ってくれる。
それは揺るがぬ確信だから。



でも、彼にそれを言わせてはダメ。

絶対に、駄目。

それではいつもと同じ、彼に護られているだけで終わってしまう。
一方的な愛の享受で終わってしまう。


彼はいつでも、どんなときでも私のことを想い、考え、優先してきてくれた。
その彼が・・・・その場で断らなかったのだ・・・・・・・・・・・・
その理由を、私は少なくともそのくらいは汲み取らなくてはならない。





彼が動くのが分かった。



「やっぱ怒って、るよな……。
 せつら……ごめ――――」



駄目、

言わせては、

彼に言わせては、駄目――――――――――――!!!





「しても、いいよ―――――――………」





途端、涙が溢れてきた。


きっと、心に傷がつく、というのはこういうことを言うのだろう………。



ざっくりと、心が鋭利なナイフで切られたようだった。

血の代わりに、涙が溢れ出してきて止まらなかった。



声は出なかった。



後ろから、そっと彼に抱きしめられた。





暖かい……。

愛しい……。

私の半身―――――――、
私が、何よりも、誰よりも、大切な人――――――――――…





なんで。

どうして。

分けが分からない。

私は貴方と生きていられれば、それだけでいいのに。

他には何も要らないのに。


もう貴方と一緒ならこのまま死んだっていいのに。





なんで










私は声にならない叫び声をあげながら、大声で、泣いた―――――――――――――――


















































それから私たちは何時間も、素肌を合わせて眠った。
そして眠りから覚めた私は、ようやく着きを取り戻していた。

泣きはらし、とても泣き疲れたけれど、それでも精神的には落ち着いていた。

長い長い葛藤と、過程と、時間を経て、私はやっと飛鳥と向き合えるだけの意識を手にしたのだった。


「やっぱ、断ろう。俺が馬鹿だった」
「う、ううんっ…、
 飛鳥がしたいなら、いいの……」


だって、飛鳥は、

私に飽きたとか、
私への想いが冷めただとか、
他の女の子に興味をもっただとか、

そんなこと、片鱗も私に感じさせてくれないから。

ただ、私のことを好きだという想いしかくれないから。

だから、私は何も言えない。

彼のことを信じることしかできない。

彼が望むなら、

私は彼の半身として、彼の望みを叶えてあげたい――――――。





ただ一つ、私の中で納得がいかないのは、それが彼の提案ではないということ・・・・・・・・・・・・・・・・
彼の友人であり、悪鬼の四天王の一人、不良の東江黎の希望であるということ。


「ねぇ……、アズマさんて、飛鳥にとってそんなに大切な人なの……?」
「大切な人、というのは――――…、
 まあ、そうだな。
 俺の大切な親友だ」
「………」

「勿論、大切さの比で言えば、せつらとじゃ比べものにならないが……。
 いや、大切なものを比べるのはそもそもおかしいけれど……」


言葉上では矛盾してしまうが、彼の言わんとしていることは分かる。


「私が……、訊きたいのは………」
「せつらが、アズマに抱かれても平気なのかってこと?」
「う、うん、それもなんだけど……」
「?」

「私が一番知りたいのは、
 飛鳥が、したいのかどうか、が、いちばん…………」
「ああ」


飛鳥がしたいというなら、私はきっと頑張れる。
でも親友の為とかいうなら、ちょっと辛い、いや、かなり辛い……。

勿論、答えは分かっている。
だって彼はその場で断らなかったから。
私を傷つけると分かっていて、断らなかったのだから。
それでも、彼の口からはっきりと、言って欲しい。


「最初アズマから話を持ちかけられた時、ふざけんなって思ったよ。
 ブチ殺してやろうかとさえ、ね」
「………」
「でもやつの提案にどうしようもなく魅力を感じている自分がいた」
「え……、そう、なんだ」

「だって、せつら。
本当は凄いスケベな娘だし、俺に虐められたいと思っているドMだし、それに輪姦願望だってあるんだろう?」

「え? え? え? え? え? え?」

「悠理ちゃんとよく秘密のお茶会・・・・・・を開いているんだろう?」

「な、なんで、、、それ、、、知って―――――――――……」

「本当は前から知ってたよ。
 悠理ちゃんがアズマに話して、俺のところに伝わってきてたからね」










が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!

が―――――――ん!!!











もしもその時、彼が私の体を強く抱きしめていてくれてなかったなら―――――――……





私は恥ずかしさのあまり、窓から身を投げていたかも知れない。










「あううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう――――――……………、、、、、、、、」










ああ、多分、今、体中の血液が、顔に結集している。



「んんっ――――――……」



完全にパニックに陥った私の唇を飛鳥が塞いだ。



「んっっ――――――はぁっ―――――はぁっ―――――、
 はぁっ―――――はぁっ―――――……」



昏迷
混乱
錯乱
カオス
パニック



もう、何が何だか、分からない。



飛鳥が体を起こし、それから――――――、



私の上半身をまたいだ。





そして、すぐ目の前にアレを、





「ほら、咥えろよメス豚。
 ちんぽ大好きなんだろ?」





それは、いつもの私のオナニーのオカズで――――――





妄想の飛鳥に言わせている台詞で。










ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!










心が締め付けられる。





それは苦しくも、激しい興奮をもたらす、歪んだ快楽―――――。





飛鳥、飛鳥っ――――――――――――……










「おまえ、俺にこういう風に、されたいんだろ?」






























はい……






























私は素直に頷いた。



















































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