10月21日―――――……





再び学校へ通い始めた私だったけれど、以前のようにはいかなかった。





私は思い知らざるを得ない。










私はもう、壊れている――――――――――










私の中の何かが、すっぽりと抜け落ちていた。





肝心な何かが、それはきっと生きていく上で必要な何かが、完全に欠落していた。





あの時―――――、羽織に連れ出され、紅葉の景色を見た時――――、
私はその美しさに心が震えた。

確かに、綺麗だ、と思った。

そう感じたのは、私が紛れもなく生きているから・・・・・・・だと思った。

でもそうじゃなかった。





悠理、萌、羽織、その他クラスメイトたちと、表面上では適当に会話をあわせ、表情を見繕いながらも、いつも、私はそこにいなかった。





何をしても楽しめず、笑えず、絶えず苦痛と苛立ちに襲われ続けた。










私の日常は―――――……

日常?

日常――――って……?



私にとっては飛鳥といることこそが日常だった。

彼がいない生活は、非日常的で―――――



それは絶え間ない虚無感と苦痛の連続でしかなく―――――……

























「あ は は は … …」


私は終にはもう笑い方さえ、分からなくなっていた。
愛想笑いさえ、上手にできなくなっていた。


美味しい食べ物で溢れているはずの秋は、私に苦痛しか与えなかった。


何を食べても美味しいと思えず、大好きだったパフェさえも味気なく、

食べ物を口にしても、美味しいと思えないことがまた私に苦痛をもたらし、

負の連鎖が私を蝕み続けていた。





















「つまんねー……………」










いつしかそれが、私の口癖になっていた………。




















悠理もまた以前の彼女では無かった。
痩けた頬が痛々しく、その態度には以前のような控えめさ、お淑やかさよりも、おどおどとした感じが目立った。

あの事件で、彼女が撲斗の不良グループに輪姦されたことや、また悪鬼の四天王である東江黎と付き合っていたことなどもなぜか伝わってきており――――……

未だ居座り続けている無数のカウンセラーや指導員たちは、今回の事件を受けていっそうその仕事に熱を入れ、そのお陰であからさまな虐めなどはないものの、クラスメイトたちは悠理に対し何歩も距離を置いているようだった。

親友であるはずの私たちはあまり交流を持たなかった。
何しろ話題がない。
話すことが何もないのだ。

以前、何時間でもおしゃべりを続け、次から次へと溢れてくる他愛のない話題が、何一つ浮かんでこなかった。



大切な存在だと思っているにもかかわらず、

寄り添いたいとも思っているのに、

私たちはお互いに悲しみを思い出すだけの存在になってしまっていたのだ………。










羽織は同じクラスだったけれど、私に話しかけてくることは殆ど無かった。

一度だけ今月末に延期されていたマラソン大会について訊かれたけれど、私の体力で走れるはずもなく、それは彼女も納得しているところであって、それは単純なやりとりに終始した。

彼女が暴走族に入っているという噂もまた、どこからか流れていて、
しかし、もとからクラスメイトたちに距離を置いていた彼女はやはりどこか超然としていて、それが猫かぶりであることを知っている私は、内心おかしかったけれど、
他者との関係を持つこと自体億劫になっていた私は、結局、自分から彼女と関わろうと思うことができなかった。





















登校、授業、会話、帰宅、就寝………





それがどんなに苦痛に苛まれるだけの日々であろうとも、





私が生きている限り、





続いていく―――――……





時は流れていく。










私の心などお構いなしに、日々は、






























つまんね―――………..................







































































第58話:欠落
終わり

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  第59話:萌
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