「どうしてあんたがそんなこと知っている―――――――!!!」
飛鳥は私のものだ。
私のものだ。
私だけのものだ――――――――――――――――――!!!!!!
叫んだ瞬間には、既に羽織の木刀を弾き飛ばしていた。
羽織の反応は速かった。
確かに速かった。
異常なほどに、恐ろしいほどに、私にはとてもついていけないはずの―――――…
でもなぜか、私にはその一挙一動が、まるで手に取るように見えていた。
驚愕に目を見開いた羽織に、怒りのまま、もう一撃振り下ろそうとした時、
横からの気配を感じて私は飛び退いた。
私のいた場所を貫く、突き。
転身し、追撃する刀。
私はとっさに身を捻って避ける。
予測を遙かに上回る、恐ろしい速さで切り返した刀が私に襲いかかる。
ガツッ―――――――――――――――!!!
私はとっさに木刀で受け止めた。
衝撃に手が痺れる。
が、衝撃の次の瞬間に既に刀は離れ、私の足に振り下ろされようとしている。
間に合わない――――!!!
その神速とも言える刀の動きを、なぜか追えることに不思議でならなかったが、そんなことを考える余裕は無かった。
私はとっさに上体を倒して、足を払い、ダメージをぎりぎりまで軽減する。
それでも凄まじい痛みが走った。
私はそのまま1回転、転がって再び刀を構え―――――、
ガツンッ―――――――――――――!!!
既に肉薄していた。
また、打ち合った。
しかもそれは刀身ではない―――――……、刺突――――――――――――――
その切っ先を私の木刀の腹が受け止める。
あ、当たったらどうするつもりなんだ――――――!?
少しでも軸がずれていたら―――――……
少しでも左右に力が流されていたら………
冷や汗が伝った。
七種いつき―――――――――――――
彼女が刀の向こうでニッと笑った。
やだ。
この人には、負けたくないッ―――――――――!!
でも強い。
それもとてつもなく。
まるで名のある剣豪と戦っている気分だった。
なぜ、自分がその動きについて行けるのかは、分からない、
―――――が、動ける。
暗い中、無数のバイクのヘッドライトに照らし出されたリングは戦うには最悪な条件下だった。
強い照明に、動きが見えず、目が眩む。
でもそれは相手も同じはず―――――!!!
しかし気負った私の思い虚しく、3度の応酬の後、私の木刀は宙を舞っていた。
手首に激痛が走る。
受け流しが甘いと思った時にはもう遅かった。
終わった――――――――……
でも私は動きを止めなかった。
まだ負けたわけじゃない――――――――――!!
私は一気に前へ踏み込んだ。
女はすぐに反応した。
視える
釣れた!
私は彼女の剣筋を読み切って、
白羽取った―――――――――
が、白羽取りを成功させた私は、喜びに一瞬気を抜き――――――――――――
刀はいきなり重みを増し―――――――――――
彼女が木刀を捨てたのだ。
(下――――――――!!!)
女の手刀が伸びる。
(喉元!?貫手――――――――!?
避けられない―――――――――――――!!!!)
私はまったく動けぬまま、彼女の指は私の喉元でぴたり、と止まった。
「気に入ったよ、せつら。よろしくな」
「え?」
笑顔と共に差し出された手に、私は唖然とした。
必死に肩で呼吸をする私とは裏腹に、彼女は平然としていた。
「強くなりな。
別に今すぐじゃなくたっていい。
強くなりな。
あんたならそれができるよ」
周囲から突然、歓声があがった。
私はいつのまにか、神羅雪のメンバーとして迎え入れられたのだった―――――――。