警察の動きは把握している。
奴らの仕事は牽制と誘導だけ。
だが俺たち魔夜火紫も見つからないようにしなくてはいけない。
警察全てが俺たちにいいように動いてくれるわけでもない。
実のところ、俺は十の持ちかけた計画を警察内部に密告してやろうと何度も悩んだ。
裏でヤクザと手を組んでの女暴走族狩り。
それに十はうちの組から少なからずの金を要求し、受け取り、薬の売人の便宜を図っている。
それは背信行為どころか、立派に犯罪の片棒を担いでいるのと同じだ。
しかしあの老獪な署長が署内でなんの手も打っていないとは到底考えられず、下手に動こうものなら、逆に俺がドラム缶に詰められることになる。
だから俺は動けなかった。
というより単に俺はもう、警察組織そのものが、信用できなかっただけなのだが……。
結局俺は流されるまま、何もできぬままにこの日を迎え、ことに臨んでいる。
もうこれ以上考えても仕方が無い。
今、俺にやれることはただ一つしかないのだ。
俺にはもう、あの女を狩る以外、生きる道は残されていないのだ。
そして、俺は凍てつく寒さの中、現実を離れ、まるで夢でも見てるような面持ちで、女狩りを始めた。
そして神羅雪をまんまと、人気の無い山中で取り囲んだのである。