片側一車線しかない山道を二車線とも埋め尽くして上がってきたバンは4台。
それどれもが、ライトがなければ闇に埋もれてしまう漆黒の車。





皆、待っていた。
奴らが来るのを。





私は焦っていた。

ただ、私だけが焦っていた。


私には皆が何を考えてるのか理解できなかった。



ねぇ、何で相手がくるのを悠長に待ってるの?

早く、逃げなきゃ。


早く、早く、早く。

ねぇ、早く逃げようよ!!!



今のうちに逃げちゃえばいいじゃん―――!!!



ねぇ逃げなきゃ―――!!


ここから逃げなきゃ――――――!!!




こんなところでヤクザを相手にするなんて、どうかしてる!!!!!





そんなの絶対におかしいよ―――!!!!!





しかも警察もぐるだなんて――――――!!!!!!!!!!










羽織―――!?

悠理―――!?

いつきさん――――――!!!?


みんな――――――――――――!!!!?




















でも――――――、










誰一人動かないから、私も動けずに――――――……




















嵐の前の静けさ―――――だった……。




















一度持った熱はあっという間に夜風に奪われ、私は寒さに身を震わせた。
鳥肌が立っていた。

そして感じる、激しい焦燥と動悸。

多分もう無事じゃ済まない、と思った。



殴られるか、蹴られるか、

怪我をするだけじゃ済まないかも知れない。

最悪拉致されて、どこかに監禁されて―――――――………



そんなことになるなら、警察に補導されたほうがまだマシだ。










嗚呼、寒い、寒い、寒い………、

こんなの、現実じゃない。

そう、きっと夢だ。

ちょっと嫌な悪夢を見ているだけなんだ。



本当は、家で、熱いスープを飲んで、暖かいお風呂に入って、柔らかな布団に包まれて眠っているはずなんだ。



だから早く、醒めてしまえばいいだけなんだ。










早く、早く―――――――――――――――――――――――――――――――――






























私の願いなどつゆ知らず、目の前の光景は更に展開していく。


バンが止まり、ドアが開き、ぞろぞろと男たちが降りてきた。
誰もが、私の2倍はありそうな、体格。



一番前に進み出た男が、大声を張り上げた。


「ちっ、魔夜火紫の連中はほんと使えねークズばっかりだな。
 女の族一つ潰せねーかよ――――――」


バンのヘッドライトに逆光で顔ははっきりとは見えないが、声音からするいかなり年齢がいってるようだった。
それに男たちの中では一番背が低く、太っている。
どうやらそれが、ボス、らしかった。

彼は地面で伸びている男の一人を―――――さっきのリーダーだ――――――、上から思いきり蹴りつけた。





「あんたが、くろがねかい?」

「いかにも。
 俺の名前を知ってるってことは、もう俺たちが誰か分かってってことだな?
 流石、磯姫――――七種いつき」

「ああ、桜劉会のクズ共だろ?」

「くくっ―――」

「随分と派手に動いてくれるじゃないか。
 まさか警察とつるんで道路封鎖までするとはね。
 だが生憎あんたらと話すことなんて何もないよ。
 うちらはもう家に帰るところなんでね」

「残念ながら、今日はおうちには帰れんよ、お嬢ちゃん方―――。
 いやもう二度と、かな―――…………」

「……………………」

「メス共、ようく聞け―――!!
 おまえたちを今日からうちの社員にしてやる・・・・・・・・・・
 どうした!?喜べ―――!!
 俺はお前らみたいな、中途半端な、なんの取り柄もない社会の脱落者を、
 社員として迎え入れてやろうって言ってるんだぞ?
 配属は風俗部門だ。
 なにとっても簡単な仕事さ、お前たちみたいな社会のゴミどもにも務まる、な―――。
 なにしろ股を開いてちんぽを咥えるだけの簡単なお仕事だからなぁ――――――!!!」

「ゴミにゴミ呼ばわりされるされる筋合いはないね」

「くっくっく―――。
 磯姫、お前も一つの族のリーダーならもう少し仲間のことを思い遣るべきだ。
 今お前たちは窮地に立たされている。
 なら相手との交渉を円滑に進めるのもリーダーの仕事だ。
 なあ、そうだろう?」

「ああ、分かったよ。
 分かったから、さっさとかかってきなよ」

「どうにも血の気の多い女だ。
 俺も大概だが、お前みたいな女は――――――――」



男は懐から何かを取り出した。
ヘッドライトの逆光だがその仕草だけで分かる。




拳銃―――――――――――!!




勿論、日本ではそんなものの所持を認められていない。



「はっ―――そんなものをちらつかせさえすれば言うことを聞くとでも?」


「随分、威勢がいいな―――、いや虚勢か?
 それとも、もしかして、俺が本気で撃つわけがないと、
 そう思っているのかな―――?」


「撃てよ、屑」







パンッ――――――――――――――!!!







信じられなかった。

男が発砲した。

闇に火花が散り、山に火薬の爆音が響き――――――――――――





私には目を覆う暇さえ無かった。




















「避けた、のか―――?」

「そんなの、見れば分かるだろう。拳銃とはいえたかだか秒速3〜400メートル。
 それにね、どんなに弾が速くても引き金を引く指が遅すぎるだろ・・・・・・・・・・・・・・
 銃口の向きと指さえ見てりゃ、小学生だって避けられるよ。
 私に当てたきゃ――――」

「狙っているとも」



「ぎゃあっ―――――!!!」



突然羽織がのけぞり、倒れた。



「ま、狙っているのはお前じゃないがね。
 お姫様」


「羽織っ―――――――――――――!?」





いつきさんが叫んだ。
勿論私も。

誰が撃ったのか。
どこから撃ったのか分からなかった。
多分バンの向こう、闇の奥。


「ここは日本だ。幾ら俺でもそう簡単に殺す・・なんて言葉は使いたくねぇ。
 だがお前らみたいなやんちゃな餓鬼を手懐けるためには、
 時には心を鬼にしなきゃならねぇこともある」

「さあ、磯姫。こっちへきて俺のちんぽを咥えるんだ。
 今日からお前が吸うのは血じゃない。精液だよ」




「クソ野郎っ―――――!!」




いつきさんが構えた瞬間、
再び羽織が悲鳴をあげた。





また、撃たれた――――――!?





「さっさとしろ。
 その子を失いたくなければ」



男がベルトを外し、そこから一物をとりだした。
幸い形までは見えないが、とんでもない男だ。





信じられない、、、目の前の出来事が。


こんなことが、現実、なのか。










私は以前、集会で聞いた話を思い出していた。

それは神羅雪、族の掟――――――……

神羅雪は決して仲間を見捨てない・・・・・・・・・・・・・・・
しかし万が一仲間を盾に取られた時は決して相手の要求をのまない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



それは共倒れを防ぐため。





生き延びるための、血の掟・・・―――――――――………










「さっさと咥えて貰えますか、お姫様。
 それともその娘がもう一発ぶち込まれるところがみたいかね?」


男がいやらしい言葉で宣告する。





だからもし神羅雪の掟に従うならば、
たとえ羽織が盾に取られても、いつきさんは―――――――――……





「姐さん!!!」
「いつきさんっ………」


「いつきさん、駄目っ―――――」





苦痛に呻きながらも立ち上がろうとした羽織が、再び倒れた。





また、撃たれた!!!!!


遅れて聞こえた微かな銃声。
着弾より遅い――――――――――!?


確か音の速さは秒速330mくらいで…。
それ以上速い弾は着弾よりも銃声が遅れて聞こえると、聞いたことがある。





「そうそう、君のところの掟は知っているよ。
 仲間は決して見捨てない。
 だが仲間を盾に取られた場合は決して相手の要求をのまない、だったかな?
 磯姫、確かにおまえの力なら私のものを咥えるふりをして、一瞬で斬り捨てることができるだろう。

 だから、だからだよ―――、、、 だから標的に彼女を選んだ・・・・・・・・・・・・

 君は神楽歌織を崇拝していた。
 彼女はその大切な妹だ。
 君が掟をとるか、彼女をとるか、私も賭に出たんだよ。
 ま、念のため、もう一人くらいいっておくか」





美香さんが悶絶して、倒れた。

また遅れて聞こえる銃声。





「くっ―――――――――貴様ああああッ!!!!」






私は一番後ろで怯えながら、それでもどこか冷静に状況を見ていた。

敵は本気だった。
本気で私たちに対峙していた。

このヤクザは単にごり押しでいつきさんを潰しに来たんじゃない。
銃弾さえ避けてみせる彼女の力量をちゃんと分かっていて、その上で向かってきているのだ。

いつきさんの強さも、そして弱点も調べ上げて、牙を向けてきているのだ。

そして今、完全に神羅雪を飲み込もうとしている。





「さっさとしろ。
 おまえはご主人さまに風邪を引かせるつもりなのか!?
 このメス豚が―――!!
 寛大な俺も流石にイライラしてきたな、、もう一人撃っておくか?
 本当は大切な商品だからあまり傷つけたくないんだがな―――
 おい、もう一人撃――――――」

「待て!!!
 分かった―――――――――!!!」



いつきさんが木刀を投げ捨て、両手を挙げた。

そしてヤクザの組長の前へ進み出て、





跪いた。










絶望的な光景だった。




















「一つだけ頼みがある……」
「なんだ?」
「言うことは聞く。だから、早くあいつらを病院に連れて行ってくれ……」

「それはお前のフェラテク次第だな。
 俺をイかせたら、連れて行ってやる。
 はは、一生懸命やらんと、あいつらはいつまで経っても病院にいけないぞ!?
 もしかすると出血多量で死んでしまうかもな。
 そうなるとお前は一生フェラが下手だったことを悔やまなければならなくなるな(笑)」

「くっ……」





そして彼女は、その股間に顔を埋めた。





「ははは―――――!!!!!!!!!!
 あの磯姫に、ちんぽを咥えて貰える日がくるとはなぁ!!!
 はははははっ、いいか、女は黙って、男のちんぽ咥えてりゃいいんだよ―――!!!
 おいそこのメス共もちゃんと目ン玉開いて見ておけ、
 男の股間に顔を埋め、必死にちんぽを頬張るお前らのリーダーの姿を、な
 ――――――――――――――――――――――――!!!」





私たちは声も無かった。
私は苦痛に呻く羽織に駆け寄った。


抱き起こそうとしたら、べっとりと血が手に付いた。。



「羽織っ、しっかりして……」


「おい、お前らも楽しめ」
「うっす」



男の合図に、うしろに控えていた男たちがぞろぞろと踏み込んできた。


羽織を抱きかかえている私を彼女から乱暴に引きはがした。



「俺こっち」

「なんだよ、こいつ撃たれた奴じゃねーか。
 まあいいか」



男たちは各々私たちの体へと目標を定めた。
その声は既に勝ち誇り、これから行う陵辱を歓喜している。










「おらっ、さっさと咥えろ―――!!!」




バシンッッ――――――――――――――




神羅雪の幹部の一人である杜さんが男に殴られ地面に倒れた。
乱暴に引き起こされその顔に股間を押しつけられる。





すぐ左では苦痛に呻く羽織の服を、男が乱暴に脱がせていた。





その向こうでは悠理が………




















「おうふっ、おおおっ、いいぞぉ、いいぞおおおおおお―――――――――!!!」





遠くではいつきさんの頭を両手で抱え、その口に激しく腰を振っている男。




















「いつきさんっ……、羽織……、悠理、、、」










私の鼻をきつい匂いがついた。


乱暴に髪の毛を掴まれ、それを顔に押しつけられた。



「おい、さっさと咥えろよ」



もの凄い力で顎を締め付けられ、なけなしの抵抗虚しく、私は口を開いて男のものを受け入れた。





「歯立てんじゃねーぞ!!
 おらっ―――こう―――やって―――頭振って―――、奉仕すんだよ!!!!
 おい、聞いてんのか!!!」 





乱暴にひっぱられ、髪の毛がブチブチと何本も抜けた。





その先端を喉奥まで突き入れられ、嘔吐き、涙が滲む。





「なんだよ、ちんぽのしゃぶり方も知らねーのか――――――!?
 便器としても使えねーのか、神羅雪の女はよ――――――!!!」






























やだ―――……





やだよぅ……





こんなの





泣きたくなかった。





こんなことで泣きたくなかった。





だって約束したから、





頑張るって、





飛鳥と、、、、




















約束………




















したから……



















































何かが溢れてくる。





感情の高まりと共に、私の中に何かが――――――――――――――――――――










なんだこれは





なんなんだこれは





許されるのか





こんなことが許されるのか―――――――――





私は認めない





絶対に認めない





あってたまるものか










こんなことが現実に許されてたまるものか―――――――――!!!!!





















ふざけるな―――――――――!!!!!

これ以上私の大切なものを奪わせてたまるものか――――――――!!!!!































ドクンッ―――――――――







































































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