8月29日―――――――――――――――――……
その日、私は飛鳥のお墓参りへいった。
お墓の前には大きなケーキがおいてあった。
きっとそれは飛鳥ではなく、彼のお兄さんに供えられたものだろうけれど、お兄さんの命日まではまだ結構あったはず……。
が、既に焼香までしてある。
飛鳥のお母さんか、羽織か、あるいは―――――……
高浦飛鳥――――――………
私はきつく握り拳をつくった。
悔しかった。
墓石を倒してしまいたいくらいに。
疎んでいた父方の姓を墓標に刻まれた彼が、可哀想だった……。
空見せつら――――
彼の妻になることを、毎日の様に夢見ていた日々は、たった1年前のことだったのに……。
うううっ――――……うううっ――――……
終わってしまった。
夢が。
幸せな夢が。
学校もやめた。
友達ももういない。
新しくできた仲間も失って、
残ったのは、孤独と、人間離れした化け物のような力だけ―――――……
ねぇ、飛鳥――――――……
もしもあの時――――――……
私が貴男の傍にいたなら、この力があったなら、きっと貴男を救えたのに………
そしたらもう、私たちは何も恐れることなく、暮らしていくことだってできたのに………
私が貴男を護って――――――……
ずっとずっと――――――……
飛鳥――――……、私どうしたらいいの……、
貴方はまだ、私に頑張れっていうの…?
ねぇ..........
17時――――――…
太陽はどんどん沈み、赤い日が私を照らしていた。
さっきまであんなに明るかったのに。
いつのまにか何時間も経ってしまっていた。
墓地をあとにし、帰路につこうとした時だった。
墓地への入り口に、二人の男が立っているのに気付いた。
一人はとても大きい巨漢。
門より更に高いところにその頭を置き、隣に立つ木の枝にぶつかりそうになっている。
明らかに標準的な人間として、体の尺度がおかしい。
もう一人は、決して背は小さくないはずだけれど、巨漢の所為でとても小さく見える少年。
彼らの身に着けている学生服には見覚えがあった。
たしか三麓高校の―――――……
彼らは真っ直ぐに私を見ていた。
門のところに佇む彼らを不審に思いつつも、その脇を通り過ぎようとしたら案の定、声を掛けられた。
「最近、この辺で鬼の気配をビンビン感じるンや……」
話しかけてきたというより、独り言を呟いたといった感じだった。
口を開いたのは小さい少年の方。
どこか人懐っこい笑みを浮かべているが、いやらしさを隠しきれていない。
はっきりいって不快な笑い方だった。
「なぁ、あんたが羅刹なん?」
「あ"あ"!?
こいつが羅刹だってえ?
羅刹って女なんかよおぉ――――――?」
でかい――――…
私は振り向き、間近で巨漢を見上げ、改めてそう思った。
横幅はもちろんだが、身長は優に2メートルを越しているだろう。
どこか間延びした、知障っぽい話し方――――――。
でもその眼光は鋭く、奥に潜む凶暴性を私は見逃さなかった。
悪いやつらだ―――――、そう思った。
「あ、初めましてなんやし、ちゃんと挨拶せなあかんよな。
俺は三麓高校3年小童谷恭兵ちゅうモンや。
ま、三麓ゆうても、昨日転校してきたばっかりなんやけどな。
んで、こっちのでかいのは座主坊呂久斗、俺の相方や。
ほんまは学生なんか興味ないんやけど、まあそっち暇つぶしでやってんねんで」
「ウス」
「どうやー呂久斗、なんか感じるか?」
「ナンも」
「おっかしいなー、なぁ、ほんまに嬢ちゃんが羅刹なわけ?
まさか影武者とかおったりするん?」
突然、何を言ってるんだこいつらは?
「なあ、聞いとる?
本物はどこにおるん?」
どうやら頭のおかしい連中だということの気づき、私は相手にするのをやめ無視して通り過ぎようとした。でも彼らの態度にはそれなりの不快感を感じていたから、去り際、<腕>を伸ばしてでかい方を頭から押さえつけた。
背後からすぐにあがるであろう驚愕の悲鳴を思い、くすり―――と笑いながら。
(え―――――――――?)
私の<手>は受け止められていた。
「わー、本物やったんか」
「お お お っ………!!」
この男、私の<手>が視えている――――――――!?
「なんや!? これ召喚系―――!?
呂久斗、魔法陣見えるよな?」
「ああ」
召喚?
魔法陣?
こいつら何なの―――!?
私は不可解な苛立ちに押されるまま、力任せに男を圧し潰す―――――――――!!!
「ぐお"お"お"お"お"――――――――!!」
座主坊と呼ばれた男は必死に重圧に耐えるが、やがて膝を突き、それから仰け反り地面に倒れ伏した。
「すごいやん!
嬢ちゃん、鬼の力を完璧に使役してるやん!!」
鬼の力――――!?
「あああ、すっげぇ、こんな強いの”は初めて”―――だなあ―――」
思い切り、叩きつけてやったのに、巨漢はすぐに起き上がってきた。
それは初めて出会う相手だった。
いつもなら私に刃向かった相手が驚愕するのに。
まるっきり逆だった。
私のこの不可思議な力が視えるどころか、怯えていない。
なにより、私よりもこの力について詳しいように見える。
「あんたら、むかつくね」
「へぇ―――、そんな顔もするんやなぁ。
せっかく可愛いのに勿体あらへんなぁ……。
でも、だとしたらどないするっていうん―――?」
「こうする」
私は力を解放する。
体を覆う、<手>、<足>、<胴体>。
ガンッ―――――――――――――――――――!!!
私は巨漢に正面から殴りかかった。
が受け止められ、ぶつかり合い、組み合う。
私の3倍はあろうかという巨体と、正面から組み合う。
今もし、私たちを端から見る人がいたら、きっとその光景を不思議に思うだろう。
私たちは正面から組み合っているのに、私たちの間には奇妙な空間があって、私たちは直接触れあっていないのだから。
「ぐぐぐぐっ――――――――……」
「呂久斗〜、押されてんで―――?」
「ぐお"お"お"お"お"お"お"お"お"ッッッッッッ――――――――――――!!!!!」
こいつ―――――!!! この力と渡り合おうって言うの―――!?
私は更に力を込めた。
顕現する<力>が膨らむ。
男は耐えている。
銃弾すら効かない、ヤクザを何十人も相手にして、誰一人歯が立たなかったこの力に。
本当に!?
何者なの!?
こいつ人間なの――――――!?!?
「恭兵まだきゃあぁぁ―――!!」
「もう少しや!!」
私は巨漢と組み合いながら、視界の端にもう一人の少年を捉えた。
そして驚愕に目を見開く。
(あれは何―――――――――!?)
よく分からない漢字の羅列―――――――……
中国語を崩したような――――――……
梵字―――…?
それにあの印は?
背の低い少年が、凄まじい速度で印を切っている。
それは不思議な踊りのようにも見えた。
私は得体の知れない危機感を感じ、一気に力を込めた。
巨漢を押し倒し、その上から組んだ<拳>を思い切り打ち下ろす。
ズウゥゥン――――――――――――――――――――!!!!
「ぐえ"っ"―――――――――」
大地が揺れた。
巨漢が気持ち悪い声で呻き、その体を折った。
そのまま地面の上でのたうち回っている。
私は<腕>を伸ばし、上から男の肩を押さえつけた。
そしてそのまま――――――――――――――………
ゴキッ―――――――――――――――
「き”ゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”――――――!!!!!!」
鈍い音と、男の絶叫が重なった。
次の瞬間――――――――
私の伸ばしていた<腕>がスッと空気に溶けた。
(力が消えた―――――――!?)
「呂久斗、堪忍な………。
間に合わへんかった」
「チ"ク"シ"ョ"ウ"う"う"う"う"う"う"う"う"う"―――――――――――
糞いってえええええええ―――――――――――――……!!」
巨体の少年が起き上がる。
振り払われた手に、私は為す術が無かった。
思い切り突き飛ばされ、私は何メートルも地面を転がった。
とっさに腕でガードしたけれど、腕は痺れ、体中に激痛が走る。
「糞アマァアァァ―――――、なんてことしやがるウウウ―――」
ゴキッ―――――――――――――
「ぎゃあああああああ――――――!!!」
巨漢が外された肩の関節を力任せに嵌め込もうとし――――――再び絶叫があげた。
彼の左腕は再びぶらんと落ちた。
それはそうだ、私は関節を外したのではなく、砕いたのだ。
「あ”ー、マジいってぇ…、この女ひっでぇよぉおおお―――」
「そうお怒なや。
それくらいすぐ治るやろ」
「マヂぶちぎれしたわー、オレこの女本気で犯すわ―――」
「それは賛成やわ」
分けが分からなかった。
とにかく異様で、異常な相手だった。
なぜかは分からない、が、<力>が発動しない。
恐らく関西弁の少年が何かをしたのだ。
<力>が使えない以上、私に男に勝ち目はない。
しかし逃げ出そうとした私の体に、後ろから巨漢がタックルをしてきた。
恐ろしい速さだった。
どうみても私の方が身軽そうなのに。
そのまま地面に押し倒され、馬乗りにされた。
「へへっ、胸、でっけぇ!!」
私は完全に無力だった。
のし掛かられ、片手で両腕を押さえ込まれただけで、身動き一つとれなくなった。
だが巨漢の右腕は間接が外れているために、力が入らず、抑え込まれただけで、何かをしようとする手が無い。
「恭兵っ、手貸せやぁああ!!」
「待たんかいコルァ!!
人払いがまだやねんで!!」
「うるせぇえええええぇ、どうせ誰もこね”ぇよつつ!!!
犯りたくても右腕が動かねぇ。さ"っさとこ"い"!!!!!」
「かっかっか―――――、いつも先に喰おうとする罰やん」
「放せっ、このっ、放せ――――――!!!」
私は何度もも身を捩ったけれど、絶対的な体重差の前に巨漢はびくともしない。
身体を捩ろうにも、噛み付こうにも、足を蹴り上げようにも、どれも、動かない、届かない。
しばらくして小童谷という少年が巨漢の肩に手を当てた。
すると巨漢の右腕が動き――――――……
右腕はすぐに私の服を脱がせにかかった。
「へへっ へへっ、えええええへへへへへ―――」
「やめろっ、このっ、
誰か――――――――――――誰かっ!たすけて―――!!!」
「無理無理、いくら叫んでも誰もきいへんよ。
話聞いてなかったん?
今人払いの術してもうたん。
せやからしばらくこの辺にも誰も近寄れへん。
ほんまは路上レイプショーといきたいところやけど、、、、
そんなことしたら俺ら捕まってしまうやんかー!」
巨漢が私の服を乱暴に脱がし、下着を引き千切り、乳房を乱暴に揉みし抱く。
でも私は不思議でならなかった。
骨を砕いたはずの肩が、なぜ動くのか。
「はぁっ……はぁっ……、腕、なにしたの……」
「ああ、ここにちょこーっと鬼の力召喚したんや。
残念ながら俺らは、嬢ちゃんみたいに単独で鬼を使役したりはできへんのや。
そんで喚べてもちょこっとだけ。
鬼の魂を喰らったんやけど、殆ど浄化してしもうたからな」
「何を……言っているの……?
あんたたち、頭おかしいの――――!?」
「おかしいもなにも、自分が一番おかしいのは
嬢ちゃんが一番良く分かってるんとちゃうの?」
「――――――――………」
私と小童谷という男が話している間に、巨漢はそのズボンを脱ぎ、私の股の間に腰を押し入れていた。
「ちっ、入らね"ぇえぇ。
さっさと濡らせよ。クソアマ。
3秒以内に濡らさねーと、肩の骨砕くぞ」
「なに言うてん。
まんこは、柿の種とちゃうねんで―――――(笑)」
「うううっ―――――――………」
私は悲鳴を堪えた。
巨漢が私の中に無理矢理押し入ってきた。
「はは、挿った、挿った。
お"ら"、さっさと濡らせよクソビッチ」
「はは、堪忍なー。
こいつ普段は大人しい奴やねんけど、女の前だとえろう人格かわってまうんや」
なにが堪忍だ。
レイプされて許すわけがあるか――――――――――!!!
しかし身動きのとれない私にはなす術が無かった。
「なぁ、誰の墓参りしとったん?
墓参りちゅーことは、きっと嬢ちゃんの大切な人やったんやろうなぁ。
もしかしたら今もそこから見てるかも知れへんな。
嬢ちゃんが無理矢理ちんぽをぶちこまれ、気持ち良さそうに喘いでる姿をな―――(笑)」
私は男を睨みつけた。
けど睨みつける以外、何もできない。
「ふぅっふぅっふぅっ――――――、
へへ、きっついマンコだぜぇぇwwww 気に入ったぜぇえぇぇぇえええぇ」
巨漢が抜かず3度私の中へ出した。
それから掃除しろと口元に持ってきたので、やっと反撃にチャンスに喜び、思い切り噛んでやろうと思っていたら、顎を外された。
「おいおい、なにしてくれるん。
まだこの子には聞きたいことあんのに」
「羅城せつ”ら”、だろ」
「それがなー、違うみたいやねん」
「あ”?」
「さっきからコネクト試みてるんやけどなぁ、
なんか違うみたいなんや」
「…………」
「なあ嬢ちゃん、嬢ちゃんの本当の名前教えてくれへん?」
(は……?
本当の名前―――――……?)
「どういうことだよ"お"?」
「わからへん。
確かに、この子の名前であってるぽいんやけどな、
なんか違うねん……」
「クソビッチ」
「は?」
「こいつの真名」
「ンなわけあるかい――――――!!
ま、ええわ、どのみちこれは独りでは無理や。
まあ、時間はたっぷりあるんやし、もう少しくらい楽しんでからでも構へんやろ。
とりあえず、キンタマ空になるまで犯し抜いてから連れて帰ればええねんな―――」
それから彼らは代わる代わる、何度も私を犯した。
顎の関節を外された私は噛むことさえできず、何度も何度も――――――――――……
やがて辺りは暗くなり、何も見えなくなった。
気付いた時には、私の体はまるでボロ雑巾のように………
墓地のすぐ傍の草むらに打ち棄られていた――――――――――――
第三章
終