私たちはお互いを何度も抱きしめ合っていた。


街中の路上でキャーキャー騒ぐ女子高生5人に(正確には4人)、道行く人たちはさぞ迷惑しただろう。
でもこうして皆が元気に再会できたことに、後から後から喜びが溢れ出てきて、私はその興奮を抑えることなど到底できはしなかった。



私、みこと、悠理、萌、羽織――――――……



羽織だけは私たちがはしゃぐのを恥ずかしそうに少し離れて見ていた。

っていうか殆ど他人の振りをしてるような気が…。

特に、みことと悠理のはしゃぎようと言ったら無く、羽織の気持ちも、ちょっとだけ理解できてしまったのだけれど。



「ねぇ、なんでなんでなんでぇ!?
 せつら、なんで髪切ったの――――――!?」



日曜だというにも関わらず、私たち5人は皆、輪高の制服に身を包んでいた。

私もみことももう輪高の生徒じゃないから、ほんとは着ちゃ駄目なんだろうけど、でも今日だけは、今だけは、皆と仲間ということを分かち合いたい。

ちなみにみことは制服を持っていなかったので、私の予備を貸している。

援交で制服が汚れまくる所為で何着も持っていた――――とはとても言えない……。





女同士で騒ぐのは苦手だから―――、と挨拶もそこそこに去ろうとした羽織の腕に、私はしがみついた。「神羅雪だっていっつも女の子同士じゃん!」とツッコミをいれ、無理矢理引き留める。




それから改めて――――――




「ええっと……私の恋人の・・・みことです……」
「御巫みことです、せつらさんの…恋人です」

「へぇ……」
「はぁ……」
「ふぅ……」


他の人に彼女を紹介するのにそれ以外の表現のしようがなく、私は恥ずかしかったけど、でも、それ以上に喜びを感じていた。

反応は三者三様―――、というか皆同じ(笑)

それから羽織に萌を紹介した。



「ま、せつらが元気そうで何よりだよ」
「羽織もね」
「にしてもこいつ携帯捨てがるし、学校はやめちまうし、まったく友情のかけらもないよな。
 もうダチだなんて思わねー」
「あう、ごめんってば〜〜〜…、でも羽織全然戻ってこないんだもん……」
「銃で撃たれたんだから仕方ないだろ」
「でもすっかり良くなったんだよね?」
「ああ、むしろ一時期片腕が使えなくなった所為で、逆に剣の腕が上がった気がするよ」
「流石羽織! 転んでもただじゃ起きない!」
「おだてでもなんもでねぇぞ―――!」



羽織さんってそんなキャラだったんだ……と、みことと萌が驚く。



「みんなは元気?」
「ああ、元気だよ」
「いつきさんも?」
「あの人は殺したって死なねーよ」
「流石いつきさんw」


「せつら―――、ま、ほんと良かったよ………、もうすっかり元気になったみたいで、さ。
 うち、ほんとに心配してたんだからな―――」


突然、羽織が優しい声音で告げた。
そう言えば飛鳥を失って独り引き籠もった私を―――、無理矢理外へ連れ出してくれたのは、羽織だったっけ………。



「じゃ、うちはこれで―――!!」
「え、待って、まだ―――」


再び去ろうとした羽織を止めたくて、私が腕を掴もうとしたら――――――、





「羽織、たまにはいいじゃない。
 久しぶりにせつらと逢えたんだもん。もう少し一緒にいよ?」


「ん、じゃあもう少しだけな――――………」





私よりも先に悠理が羽織の手を掴んで、優しくそう言った。





って、えええええええええええええ――――――――――――!?
って、えええええええええええええ――――――――――――!?
って、えええええええええええええ――――――――――――!?
って、えええええええええええええ――――――――――――!?





そんな羽織の顔、初めて見たんだけど――――――!!!





って、えええええええええええええ――――――――――――!?
って、えええええええええええええ――――――――――――!?
って、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ――――――――――――!?





これはもう、ピンときた。
っていうかピンとくるしかない。





「え、悠理…?」
「あ、」


悠理に私の言おうとしていることは伝わっているはずだ。


「悠理?」
「あ」

百合ゆり?」
「あ、うん」

「え、悠理!?」


みこともびっくりして訊ねる。


「あぁああぁぁ―――もおおおぉぉ―――、うっせぇな、そうだよ―――!!
 付き合ってるよ!!
 これでいいか――――――!!!」


羽織が顔を真っ赤にしながら悠理を抱き寄せた。



私「え、全然悪くない。素敵♪」
み「え〜〜〜〜〜〜〜w 悠理、私びっくりだよもう(笑)」
悠「みことには一杯話したいことあるかも」
み「私もだよー、一杯話そ!!」

萌「ねぇ、ちょっと待ってよ……
 何よこれぇ―――――――――――――!!!!
 ………あの、つまり、こういうことだよね。
 ここにいるの、、、
 私だけ一人モンってことでいいんですかぁ―――――――――――!?」

私「まあまあ(笑)
  萌は篤志とは上手くいってるの?」
萌「うん、まあね///」

悠「萌と篤志くん付き合ってるのみんなにばれた時凄かったよね。
  あの時の篤志くんかっこよかった。
  あんな篤志くん初めて見たよ」
み「え?なになに!? 悠理聞かせて、聞かせて―――!!」
私「あと、羽織と悠理がどうしてそうなったかも知りたいよね(笑)
  ま、大体予想は付くけど…w」
萌「せつらとみことのも話してよね〜〜〜!!」



羽「とりあえずいい加減移動しようぜ……」



「じゃあどこいく!?」

「ファミレス」
「カラオケ」
「ラブホ」
「せつらんち」
「ボーリング」



うおおおおいいい――――――!!!

ラブホって言った人、ちょっと廊下に立ってなさい――――――!!!


















































まるで夢を見ている気分だった。



もしかしたらこれは幸せな夢のほんの一部分で、

すぐに醒めてしまう儚い光景なのかもしれなかった。





もしも天国というものがあったなら、きっとこんな感じじゃないだろうか。


私はふとそう思った。





泣いてばかりだった私、悠理、萌―――――。



もう二度と立ち上がることもできないと思っていたのに、私たちは今こうして手を繋ぎ、笑いあっている。





辛いことは沢山あったけど、皆、また、こんなにも輝いている。





ここにいる誰もが、私にとってかけがえのない、大切な友人だった。



この中の誰一人欠けても、今の私は無かっただろう。




















だから私は、この光景を目に焼き付けておこうと思った。





例えこれがすぐに醒めてしまう儚い夢であっても、





また壊れてしまうかもしれない、束ぬ間の喜びであったとしても、










私の大切な、大切な、幸せの記憶の一つとして―――――――――










何があっても、どんなことがあっても、今度こそ、











決して忘れないように――――――――――







































































第82話:幸せの景色
終わり

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  第83話:鬼喰らい
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