DVDを借りてきて家に籠もって二人で観た。
お互い3本ずつ選んで交互に。




















ただ、泣いた。



切ない話に。



ひたすらに、ただ、切ない話に。





人は――――――…

人という存在はあまりに醜すぎて、あまりに悲しすぎて、あまりに美しすぎる………。





想いも、願いも、切なさも、こんなに苦しくて大きなものなのに、

他の誰かにとっては取るに足らないものに過ぎなくて





変えようのない過去

変わらない現在

届かない未来


その連なりの中で誰もが必死にもがいて、あがいて、のたうって、





そんな人の命は―――



ある人は、100円より安く失われ、

ある人は、地球よりも重く、

ある人は、他者のために、あるいはゴミのようにそれを投げ出し、

ある人は、太陽よりも激しく輝いている――――――




















羅城せつら………、、、


私はどういう人間なのだろう……
私は一体どういう存在なのだろう………



何の取り柄もない……、、、

ちょっと容姿はいいかもしれないけれど、
他人には無い、不可思議な力はあるけれど、、、

でも、やっぱり、ただの、女の子で、、

大切にしてくれる人もいるけれど、
でも多分、殆どの人からは蔑まされていて、





私は―――……










美しくありたい……


強くありたい……


正しくありたい……





でも分からない……、、、



私の頭じゃ



一体どうしたらいいのか、



何をすべきなのか



この、あまりにとりとめのない感情も、



世界も、



私が構築し、私を内包するこの世界に、



対して、



一体何ができるのか、



実のところ私には、



何を悩むべきかさえ分かっていない、、、、





自分が存在する理由など考えるだけ無駄だろうか?

神はいるのかとか、いるならどうして人間をつくったのかとか、作ったなら何を求めていたのか、とか、

他の人はあまり考えないことなのだろうか、

私はそんなことを考える必要が、意味が、理由が、価値が、態度が―――――――――……




















力は人を傷つける。

それが正しい力であっても悪しき力であっても―――――――――……


そして強い力は更に強い力を呼び寄せる………

それが世界の原理で………

この輪光でも起きたように、起こっているように、

そして力はぶつかり合い、それに巻き込まれた人は、










誰もが英雄に憧れ、主役を求め、輝きたいと願っているのに……



それらは全て力あるものに奪われていく――――――……



夢も希望も金も仕事も愛しい人も友人も大も小も何もかも最後の一欠片に至るまで、



全てが奪われる





勝者とは、同時にこの上ない略奪者のことなのだ――――――……



それこそがこの世界の真の姿で



ただそれだけのことで………










私はこの力で、一体どれだけの人を傷つけてきたのだろう……

私はこの力でを、少しでも正しく使うことができているのだろうか………





私のこの力は何のためにあるのだろう……、

私には一体何ができるのだろう、、、、

もしこの力が無かったら、私には何かできるのだろうか………










望みは叶わないことを知っている


願いが届かないことも知っている



声が枯れるまで叫んでも



涙が涸れるまで泣いても



絶対に叶わないこともある










敗者にもならず、勝者にもならず生きることはできないのだろうか





何も奪わず、何も奪われないまま、




















分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない―――――――――…………、、、、分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない!分からない――――――!!!!!





何もかもが分からない………




私はあまりに無力で、ちっぽけで、




私にとってはあまりに重荷で………




私にとっては、




何をすべきなのかを考えることさえも、




















それでも生きろと言うのなら、




私の望みは………、、、




せめて………





私はもう―――、泣いている人を見たくない………





私はただ、優しい世界で――――――……


















































ぽんぽんっ――――――

そんなとりとめのないことを考えていたら横から肩を叩かれた。



それは感情の渦に呑み込まれてしまいそうな私をずっと支えてくれていた――――――、
ずっとすぐ傍に感じている、とても大切な、とても愛しい存在―――……みこと。





「うにっ―――」



彼女の方を振り向こうとしたら人差し指でつっかえ棒をされた。



「あははっ―――! せつらさんひっかかったーーw」



映画を観て散々泣きまくったから、涙なんてもう一滴も出ないと思ったのに。
貴女があんまり無邪気に笑うから―――……。



「えっ、ちょっ、せつらさん!?
 なんで、泣いてるの?
 あ、そんな痛かった?
 あの………、、、ごめんなさい……」

「ちがう、ちがうよー………、もおお…………。
 みことが、あんまり馬鹿で、あんまり可愛いから………」



とりとめのない思考から、私は一気に現実へと引き戻された。
それでもまだ頭の中にモヤモヤとした霧はかかっていたけれど――――――…



「うー、馬鹿じゃないもん;」

「もぅ………、罰としてあっつい紅茶淹れてきて!」

「はいっ!
 んとーダージリンとセイロンどっちー!?」

「んー、ダージリン」

「みるく?れもん?」

「んー、、、みるく」

「砂糖は多めね」

「うんw――――――、あ〜〜〜、やっぱコーラ……ある?」

「今日はもうだ〜〜め。コーラ飲みすぎ!
 せつらさんの体調管理も私の仕事です!」

「え〜〜w」

「温かい紅茶の方が落ち着くから、ね―――?」

「うん…、分かったよ、ありがと」





キッチンへ去っていく彼女の後ろ姿に、
直前に見せた彼女の笑顔に、

私はまた涙が零れそうになった。





何も分からない、私には何も分からない、、、





だけど、ただ一つだけ分かったのだ。










私はもう、彼女無しでは立ち上がることも、前を見て歩くことも、夢を見る勇気さえ持てない、










私にはもう、彼女無しでは生きている意味が無いのだ、と――――――



















































第85話:とりとめもなく
終わり

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  第86話:指針
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