御巫の総本山―――――――――
遙か昔から有名な陰陽師の家系だという御巫の本山は、ここから3県離れた大和市来生の山奥にあった。
離ればなれになっていた2年間―――――――――
こんな遠くに、そしてこんなにも近くに彼女が暮らしていたのだと知って、私は複雑な気持ちを抱いた。
とりあえず山の麓までは一般道で移動し、そこからは歩きになる。
私は父に買って貰ったバイクにみことを乗せ、その行程を進むことにした。
別にバイクなんか欲しくなかったし、他に父に強請る物が無かったから買って貰った物だったけれど、1ヶ月もの間、小童谷たちから逃げ回って生活を共にした所為で、今はかなりの愛着が湧いていた。
あの時は―――この子だけが―――、私の唯一の味方だったのだから―――……。
「ねぇ、ねぇっ、ねぇってば――――――、せつらさん免許持ってるのー!?」
「免許?なにそれ美味しいの?」
後ろから思いきりしがみついてくるみことが可愛くて、ちょっと車体を倒すときゃあきゃあ言うものだから、ついついスピードを出してしまった……、、、ううっ、反省/////
3県の距離くらい一日の行程で行くはずだった私は、突然のアクシデント見舞われた。
生理が来てしまったのだ。
父との行為の所為でピルを飲んだり飲まなかったり、すっかり生理不順に陥っていた私の体は、その反動に完全に参ってしまっていた。
このところ変な男と殴り合ったり、レイプされかけたりして精神的ストレスも半端がない。
体は最悪の不調を訴え、バイクの運転すら困難な状況だった。
もう本当にどうしようもなくなり、私たちは近くで休むことにした。
普通なら3日をみるが今回の生理は正直いつ収まるか全く予想がつかなかった。
下手をすると病院に行く羽目になるかもしれない。
しかし小童谷たちのことを考えると同じところで3日足止めを喰らうのは正直厳しい。
1日でも早く、御巫の家へ辿り着きたかった。
明日、調子が良くなればすぐにでもでた方がいいだろう。
その日、私たちは立ち寄った街の旅館に宿を取り、休んだ――――――――。
私たちは二人一緒に温泉に入った。
万病に効くと謳うその温泉は最高に気持ちが良かった。
それからみことの房中術で氣の流れを整えて貰った私の体調は、あっというまに回復の兆しをみせた。
しかし翌日――――――、
立ち寄った食事処で私たちは思わぬ惨劇に見舞われた――――――………。
「ううっ、挿れられちゃった………」
駆けつけた時には遅かった。
私の目の前で、みことが泣いていた。
涙を流し、その顔をくしゃくしゃに歪めていた。
怒りは収まっていない。
けれど怒りを向ける先はもう、無い……。
トイレに立ったみことがなかなか戻ってこないので、心配になって見に来たらそこには清掃中の札が立っていて―――――――…… 男子トイレから聞こえる物音に覗いてみたら、みことが3人の男に乱暴されていたのだ。
「もう、済んだことだよ………」
トイレの床は一面真っ赤に染まり、3人の男が夥しい血を流して倒れていた。
ぴくりとも動かない。
微かに動く胸だけが、辛うじて生きていることを示していた。
怒りは収まらないが、これ以上手を出せば殺してしまいかねない。
本音を言えば殺してしまいたいところだが、そうするとあとあと面倒なことになる。
そうでなくとも、床に転がる男たちは、既に目を背けたくなるほどの惨状だった。
昔、どこかの国に「右手でものを盗んだら、その右手を斬り落としてしまえ」という刑罰があったのを思いだし、私は彼らのモノを3つとも引き千切ってやったのだ。
無論、ショック死しないよう、完全に彼らの意識を絶った後で、だ。
「わたしはねっ―――!!
ほんとにもう、せつらさん以外、触られたくないのっっ――――――誰にも!!!
もうやだ、もうやだよぉ……………」
「それは分かってるし、私も同じだけど……」
私の胸で尚も泣きじゃくるみことを、私はただ抱きしめるしかできない。
これ以上どうしようもない。
みことの人払いの方術のお陰で急いで逃げる必要はないものの、しかし早く救急車を呼ばないと本当の殺人者になりかねない。
みことを集団暴行したのだから正当防衛だが、この有様では誰一人それを認めてはくれないだろう。
被害者が罰せられる………。本当に、どうしようもない世の中だ、と思う……。
「みこと、愛してるよ。
ほら、私も……さ、、小童谷とかに挿れられちゃったし、、、、
おあいこってことで……」
「おあいこってなによぉぉぉ――――――――――――!!!」
「んー……。
違うか…………」
「全然違うし…;」
「うー。」
「やだよ……、もう、なんで男って……男って………
うー、、、、なんでせつらさんおちんちんないのぉ……!!」
「ちょ―――…… そんなこと言われても……」
その時―――私は、彼女がおちんちんを欲しがったことに、若干の寂しさと、同時に大きな安心感を抱いていた。
以前私の兄に強姦されたことで、そして今日こういう目に遭ってしまったことで、もし彼女が心に大きな傷を―――、拒否反応とか心的外傷とか、そんなもの抱え続けることになったとしたら―――……それはとても辛く、苦しいだろうから―――………。
あれ。でも修行でもしたんだっけ……。
あ、でももしみことが、レイプされたことで女である私に走ったのなら、それはそれでお兄様様ということに―――――、
いやいやいやいや―――!! なんて不謹慎なことを考えてるんだ、私はっ――――――!!
でもやっぱ、好きな人と交わったら、挿れて欲しい、よねぇ………。
不思議なことに、女同士って言ってもやっぱりするときは攻めと受けに分かれるし。
正直なところ、私自身、みことに入ってきて欲しいと思ったことは何度もあるし、その逆もまたしかりなのだ……。
バイブとかペニスバンドなんかを使うっていう手もあるけど―――、でもそういうの考えると、私は全然今ので満足してるから、必要がない、って思うんだけど。
だって飛鳥とは違ってなんていうか、女同士だから分かる、相手の体の動きとか、ほんの僅かな機微まで伝わってきて、一体感が半端ないっていうか――――――…。
あ、でも、男の精液を出せるっていうのはいいよね。
なんか証って言うか、なんだか汚らしい気もするのに同時に愛おしいって言うか。
そうそう、証を貰えるって感じが――――――。
しかも飲むことによって、またこっちも証明できるって言うか。
うー、飛鳥の精液もっと飲みたかなったなぁ………。
飛鳥の精液……
飛鳥の精液……
って、うわあああああああああっ―――――――――’#%”#「@2!!!
私ってば何考えてるんだぁぁぁぁ―――――――――――――!!!!
その時、閃いた。
「あっ―――――――――――――――!!!
そうだ!<手>だよ!!
<鬼の手>―――だよ!!!」
「え?」
「だからね、鬼の手があるなら、鬼の……………。
ああもう(笑)
説明めんどくさいからやってみるね、ってここじゃどうしようもない」
「みことホテルいこ―――!!」
「う、うん………」
私の服は返り血に塗れていたために店内へ戻るわけにもいかず、そのまま窓から外へと逃げ出した。
みことは泣きはらしているとはいえ、衣服が乱れている程度なので、席に置いたままの荷物などは彼女に任せることにする。
一応去り際にバイクに備え付けてあった発煙筒をトイレに投げ込んでおいた。
ま、これで助からなかったらざまぁってことで………。
全ては私の延長だった。
手の先に<手>。
足の先に<足>。
胴なら、<胴>。
鬼の頭、を召喚したことはまだないけれど、<角>くらいなら、いけそうな気がする。
もし鬼に角があるなら、だけど。
で、そういうことなら――――――………
ラブホに部屋をとり、一緒にシャワーを浴びた後、私たちは向かい合っていた。
そもそも鬼に性別があるか分からない。
人間の憎悪に棲み着くという物の怪に、他の生物と同じように繁殖の為の性器が備わっているのかは疑問だし、それに私の鬼がメスだったらそれで終わりだ。
けれど、多分ある、と思った。
「でた――――――………」
みことが、私の股間を凝視していた。
「視え―――てるみたいだね」
「う、うん。
でも、これ、ちょっとおっきすぎない―――……?」
「うん。。。。」
私には視えないので、いつもと同じように<感覚>だけだけれど、それでも、私の感じるその空間にそれがあるとするならば――――――……
恐らく、それは、飛鳥や黎の、優に5倍近くの大きさが――――――――――――……
「。。。。。」
「。。。。。」
私の前に跪き、私の股間から生えているはずの男根を間近で見ている彼女の姿に、なんかこう、不思議な気持ちにさせられる。
むらむらする。
と思ったら、びくっときた。
「えっと……、さらに……、おっきく……、なったんだけど――――――………」
「あはは///」
まさかみことの顔に欲情したらそうなった、とは恥ずかしくて言えない。
もう恥ずかしすぎて、しまいたくなった。
小さくしたいのにできないし、むしろ更に大きくなろうとしている節すらあるし、言うなればそれはまさに、ぎんぎん、で、すっごいびくびく、していて――――――。
どうせそれは明らかに異常なサイズで、その先を口に含むこともできないだろうから。
「ま、これは流石に無理かな……、、、
もしするなら、鬼の指くらいが丁度いいかもね?」
「ね、せつらさん、これって感じるの?」
仕舞おうと思ったモノを、みことの手が掴んでいた。
「うん―――…、ちょっと変な感じだけど……」
「………………」
みことが両手で握っていた。
柔らかな肉に包まれて、反応する。
そう不思議なことに感じている。
鬼の<手足>を通して、実際に触れた時の感触はある。
しかし感覚があるからこそ、緻密な動作や加減ができていた、とも言える。
「え……、みこと?
ちょ―――、なんで脱いで―――、まさか、挿れるつもりなの―――――――――!?」
「うん」
みことがバスタオルを脱ぎすて、ベッドへと向かった。
そして座り、私を手招きする。
まるで娼婦のような目つきに、なんていやらしい娘!と思ったけれど、それが同時にとても愛おしい。
私はベッドの手前で座り込み、彼女の秘所に口をつけた。
十分に濡らして、ほぐしておかなければ入りそうにない。
彼女のそこは微かに出血していた。
さっきの連中に無理矢理ねじ込まれた所為で怪我をしているらしかった。
他にもいくつか打撲痕や痣ができていた。
男って本当に酷い――――――……。
私は彼女の傷を癒してあげるように、優しくそして時に強く愛撫する。
「ああっ、ああっ―――――……」
みことが私の舌に反応し可愛らしい嬌声をあげる。
私の頭を掴み、激しく仰け反る。
彼女のそこはあっというまに濡れた。
まるでお漏らししたのかと言いたいほどに。
「せつら、さんっ――――――――……もう、もう……」
みことの切なそうな声に、私は頷いて立ち上がる。
そしてその先端を彼女のあそこにあてがい………ゆっくりとゆっくりと腰を進めた。
巨大な亀頭が、みことの口を押し開く。
みことの可愛らしい顔が、苦痛に歪んだ。
「うううっ―――――――――!!!」
「無理だったらすぐやめるよ?」
ていうか、入るわけ、無いと思うんだけど―――。
正直私は、これを挿れるという彼女の発言に仰天していた。
私だったら『絶対無理』の一言で終わっている。
「うっ、だ、大丈夫、だか、ら、き、きて――――――――――――……」
みことの目尻に涙が浮かんでいた。
しかしすぐにやめると口では言ったものの、みことの顔が妙にそそった。
性的に興奮させられる、というか――――――――……
みことの中の感触と、その苦痛に歪んだ顔に、頭の芯が熱くなる――――――。
同時に沸き起こる嫌悪感。
これではまるで先ほど彼女を犯そうとした男たちと同じだ。
でも目が離せない。
みことの顔から。
ゆっくりと推し進める腰に合わせ、
その巨大すぎる鬼の性器をねじ込まれ
苦痛に歪む彼女の顔に――――――――――――――――――――――……
「せつら……さん?
だいじょうぶ、だよ……、動いて、いいよ……」
「……………」
「せつら…さん?」
「……………」
(知って………る………。
俺は、こいつを、知っている………。
なんだこれは――――――――――――――!?
俺はこいつを知っている!!
この女を、俺は知っている―――――――――――――――!!)
「ねぇ、どうしたの…?」
(俺?
俺だと!?
誰だ!?
誰だ!?
なんなんだ!?)
俺は、私は、突然パニックに陥った。
俺の下で喘ぐみことの姿が、突然フラッシュバックした。
(俺って
誰――――――――――――!?
なんなの!?
私の中に、誰かいるの!?
まさか鬼!?
まさかこれは鬼の記憶―――――――――――――なの!?)
その時不意に、私の中で一つの単語がリンクした――――――――――――――――。
「最後に一つ。
羅刹、という言葉に心当たりは?」
「鬼――――…ですか?」
鬼……
羅刹………、、、、
みことは、、、、
羅刹に、、
レイプ、、、、
された、、、、、
「おえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ――――――!!!」
全てぶちまけていた。
みことの腹の上に。
堪えきれなかった。
逸らすこともできなかった。
それから床を転がり、何度も吐いた。
私の中に何かがいる
得体の知れない、私ではない、何か―――――――――――――――
それは私が使役する鬼の力とはちがう、まったく違う、別の存在。
自分の肉体の中に、別の生物がいるおぞましさに、私は体中を掻き毟った。
すぐにみことに腕を押さえつけられたけれど、気分が悪いなんてもんじゃなかった。
自律神経が、交感、副交感神経が全て狂かれてしまったような、ぐちゃぐちゃな、世界。
何度も吐いた。
胃の中はあっという間に空になって、それでも、吐き気は止まらなかった。
それはまるで肉体の中の贓物全てを吐き出そうとするかのように。
なんどもなんども――――――――――………
延々と続く嘔吐と目眩の中で、もう殺してくれとさえ思った地獄の苦痛の中で、唯一の救いは、みことがずっと私の名を呼びながら、背をさすってくれたことだ。
はぁっ――――――はぁっ――――――はぁっ――――――……
「みこと、ごめん………」
「そんなこといいから!!」
みことは激しく首を横に振って、懸命に私を撫でてくれた。
永劫に続くと思われた嘔吐が収まるのと同時に、
私は、凄まじい疲労感と、急激な眠気に襲われた。
背をさする彼女の手の温もりが、とても、暖かかった―――――――――――――
(ああ、前にも―――………、、こんなことがあった気がする――――――………)
羅刹――――――……
多分、私の兄は本当に鬼だったんだ………
彼は本物の鬼で
そしていつのまにかどこかへと消えてしまった。
そして
彼は今
私の中にいる