その姿を見て――――――――――――――――――――――――……
私の時が止まった。
「この女、は―――――…?」
「これが私たち御巫の守り神、祀っているラクサラ様だよ」
「そう、か………」
「え、せつらさん……?
どうしたの?
なんで、泣いて―――、、」
「そう、か―――、そう、だったのか………」
彼女の姿を目にした時、俺の中に膨大な記憶が溢れ出していた。
羅城道孝として生まれ、
羅刹と呼ばれ、
せつらとなって、生きた、
全ての記憶が―――――――――………
でも俺は何も変わらなかった。
俺は俺だった。
俺は羅城せつら。
何も変わらない。
羅城せつらとして生きると、
みことを護ると誓ったあの時から―――――――――――……
溢れ出した膨大な記憶は、砂浜に静かに染み込む波のように、俺の中に溶けた。
ラクサラ、お前は俺を地獄へ連れて行こうとしたんじゃないんだな……。
お前は初めから俺を救けるつもりだったんだ――――……
どうしてなのか、その理由は分からない。
でもその時、俺は確かに彼女の本当の想いを感じていた。
「ね、ねぇ、せつらさん!?
なんで泣いてるの!?
まさかこれを見たからとか、ないよね――――――!?」
「ううん、なんかちょっと目にゴミが入って―――――――――――……」
俺は、
私は、
みことに
嘘、を吐いた。