その日、私は飛鳥と二人でホテルに入っていた。
彼の逞しい体が、私を包む。
「はぁっ―――はぁっ―――はぁっ―――」
彼の逞しいものが私の中を掻く。
それは久しく感じていなかった、生々しい、肉の感触。
人間の体に―――、
男と交わる、肉の感触。
「あああぁっ―――!!」
「せつら、愛してるよ」
「私もっ―――愛してる、、、」
感じる、彼の肉体を通して、『彼』の魂を。
激しい攻めに、肉体が絶頂へと向かう。
涙が溢れた。
(タツ―――、タツ―――、タツ―――!!!)
そこに彼の記憶は無い。
彼は私を覚えていない。
空見飛鳥は私を羅城せつらだと思って抱いている―――。
魂の記憶は、人が生きている間に失くすような記憶とは、全く異なっている……。
もしかしたら彼の記憶はもう永遠に戻ってこないかもしれない―――……。
それはとても哀しいこと―――……、
でも、それでもいい。
今はそれで構わない。
私はずっと待ち続けてきたのだ。
ただ、この時だけをずっと待ちわびていたのだ。
この腕に彼の魂を抱くこの時を――――――……ただ、ひたすらに……、、
「いくっ、いくっ、いっちゃう――――――――――――!!!」
「俺もいくよ、せつらっ―――!!!」
肉体の結合
混じり合う体液
融け合う感情
繋がる魂。
「はぁっ―――、はぁっ―――、はぁっ―――……」
私は絶頂を迎えのし掛かってきた彼の体を、強く胸に抱き締めた。
「どうしてだろう……、せつら……、
俺、今まで感じたことの無いような一体感を感じたよ……、
まるで体だけじゃなく、心まで繋がったみたいな―――」
「うん、私もだよ―――。
きっと、私たちの魂は繋がってるんだよ」
「本当に―――、本当にそうなのかもしれないな。
せつら、愛してるよ―――……」
「私も―――、
私も愛してる――――――……
お願いだから……、
もう二度と、私を離さないで――――――」
第54話:離さないで
終わり