頭痛を感じた。
それから首、肩―――……、痛い。
なんだか、耳も―――……、腕も―――……、、、
体が軋んでいる。
「ううっ―――……」
次に感じたのは――――――、、触れあう肌の感触。
そして匂い―――、安心する匂い。
とても心地よい―――匂い……、、、
「飛鳥―――……?」
私が顔をあげるとそこにいたのは彼ではなかった。
そして、私は、自分がどこにいるのかを、思い出す―――……。
随分、長い間寝ていた気がする―――……。
私は眠っている彼を起こさないよう、その腕からそっと抜けだし、トイレへと向かった。
私は何も身に着けていなかった。
私は―――彼と―――、してしまったのだろうか……。
部屋に戻ると―――、小さな窓から赤い日射しが差し込んでいた。
夕日―――……、、一体、あれからどれくらいの時が経ったのだろう。
携帯電話を取り出すと、電池が切れていて、電源が入らなかった。
確認できる物が無くて、私は伊本―――、薫くんの携帯を開いた。
待ち受け画面で、私が小さく笑っていた。
ディスプレイに表示されていた日付は9月8日―――……
もしも記憶が確かなら―――……、
私は3日以上も眠り続けていたことになる―――…………。
気付くとパソコンのすぐ傍に、寝る前まではなかった綺麗にラッピングされた包みがあるのを見つけた。
小さな小箱。
その隣に小さなメッセージカード。
“Happy Birthday!! せつら”
(そっか、今日って私の誕生日―――……、、、)
彼が私の為に買ってきてくれたのだと分かった。
でも―――……、
ごめん、、、
私には受け取れないよ……、、、
私は彼を起こさないように、綺麗に畳められていた服を手に取った。
服を着るすぐ隣では、裸のままの彼が気持ち良さそうに寝息を立てている。
彼は私を抱いたのだろうか―――……
眠りに落ちる前―――、確かに彼は私を抱こうとしていた―――…………
でも、、、
でも彼はきっとしていない。
不思議とそんな確信があった。
彼は―――……、、、
どうせ私は、もう―――……、
しちゃっても―――……、良かったのに―――…………。
部屋を出ようとして――――――、
私はもう一度彼の寝顔をみつめ―――……、
そしてパソコンの隣に置いてあった小箱を手に取った。
ゆっくりとリボンをを解き、包まれていた箱を開けた。
入っていたのは綺麗な指輪。
でもそれは―――、その造形は
私は自分の左手の薬指を見た。
ない。
飛鳥から貰ってずっとつけていた指輪が、ない。
間違い無い。
その小箱に収まってる指輪は、確かに飛鳥が私にくれたものに違いない。
この私が見間違えるはずがない。
でも、なんで彼が私の指輪を―――……
私は震える手でその指輪を掴んだ。
よく見ると内側に文字が刻まれているのに気付いた。
以前はそんな文字は無かったはず―――……
私は夕日に翳してその文字を読んだ。
そこに刻まれていたのは―――
"SE TSU RA U TSU MI"
「ううっ、ううううっ、ううっ、、、うっうううっ―――――――――…………」
私は次から次へと溢れ出る涙を止められなかった。
彼を起こさないよう必死に嗚咽を堪えた。
(ありがとう、薫……、本当にありがとう―――…………)
私は一人、彼の家を後にした。