「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”
ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”
―――――――――!!!!!」
ガツン―――! ガツン―――! ガツン―――! ガツン―――!
少年のあげた怨嗟の断末魔を聞き――――――、飛鳥は急いで割れた窓から地上を見下ろした。
そしてその光景を―――、驚愕のうちにみつめていた。
40階から転落した男が、その巨体をコンクリートへとめり込ませ、壁をよじ登ってくる。
彼の放つ鬼気は尋常ではなく―――――――――……
それは、これだけの距離があって尚、彼の存在を押し潰そうとしている。
「ありえん―――…………」
飛鳥は低く呟いた。
バケモノ―――…… 今、眼下にいるあれは明らかにヒトでは無かった。
気配を感じ振り向くと、扉の前に七種いつきと羅城せつらが立っていた。
その顔は蒼白で、彼女たちもまた、このプレッシャーを感じているらしかった。
「いつきさん、彼女を連れてすぐに逃げてくれ」
「はっきり言うよ。
あれは―――……、あんたじゃ勝てない」
「だろうな」
「逃げないのか? 時には退くことも戦いのうちだと思うが―――?」
「今は俺がお前の雇い主だ―――七種いつき。
彼女を連れて逃げてくれ。
お前の仕事は彼女を護ることだ」
「分かった―――」
彼女はせつらの手をとったが、せつらはその手を叩き払った。
「言ったはずよ。私は絶対、彼の傍にいるって―――」
「お前を気絶させ、連れてくことも簡単だよ?
言うことを聞け、羅城せつら―――」
少女は俯き、渋々頷いた。
いつきとせつらは部屋をでて、エレベーターホールへと急いだ。
エレベーターの扉が開き―――……、
しかし、そこでせつらは再びその足を止めた。
「お願いっ!彼と一緒に戦って―――!!」
それは悲痛の叫びに満ちていた。
必死の懇願。
「それはできない。
お前を護ると、あいつに約束した」
「なら―――、私があなたを雇うわ。
一千万でも二千万でも、この先どんなに時間がかかっても絶対に払う―――、
だから―――、
彼を護りなさいっ、七種いつき―――!!」
「ったくよぉぉ――――――――――――…………、、、」
いつきは頭に手をいれ、ぼりぼりと掻き毟った。
長い艶のある黒髪がわらわらと宙を舞う―――。
「どいつもこいつも、人を金の亡者かなんかと勘違いしてんじゃねーか……?
つーか、あたしはガードマンじゃねぇっつーの……。
羅城せつら、一つ約束しろ……、
お前はさっき部屋から絶対に出るな。
あの化けモンは、あたしとあいつで必ずブッ倒してやるからよ――――――」
少女はこくりと頷いた。