少女は一人、アパートの近くにある樹林公園で―――芝生の上に寝転んでいた。
遊戯具は何一つ無いがそれなりの広さを持った見晴らしのいい場所だ。
市の管理が行き届いているのか、目に見える場所にはゴミ一つなくとても素敵な場所―――には違いないのだが樹林公園とは名ばかりで、できることなら芝生公園に改称して欲しくなる景観である。
遮蔽物がないお陰で、春の暖かな日が燦々と少女に降り注いでいた。
彼女は瞳を閉じまま、ゆっくりとその胸を上下させている。
敷物もなしに芝生に寝転ぶ少女。
しかもその両腕は添え木と包帯で固定され、すぐ隣には一本の竹刀袋。
見るものがいれば若干―――気にせずにはいられない出で立ちである。
が、開発が後回しにされているその地域には人影もなく、彼女を注視する者は一人もなかった。
昨日は歌織が彼女にご飯を食べさせていたが、用事があるといって今朝からまだなにも口にしていない。とはいえ食欲があるわけでもなく、空腹感もなかった。
芝生の上で彼女は―――穏やかな大地のエネルギーを感じていた。
それはとても心地よい
大地のゆりかご
それ究極の安寧に満ちた―――快楽―――
彼女はもう何時間も寝転んだまま微動だにしなかった。
その豊かな胸の動きだけが、彼女が生きていることを証明していた。
折れた腕にもう殆ど痛みはない。
この調子ならあと2〜3日もすれば治りそうだった。
そして今、穏やかに眠る彼女に近づく一人の男がいた――――――。
「やあ」
その声に彼女はゆっくりと、体を起こした。