飛鳥が去ってから程なくして、せつらの元に歌織が歩いてきた。
「調子はどう?せつらちゃん」
「とても、いいです」
「なんだか、いいことがあったみたいね」
「はい、飛鳥が、来てくれたんです―――……」
「弟クン、なんだって?」
「今でも私に惹かれてるって、また逢いに来るって―――」
「じゃあまだ、せつらちゃんが、ほんとのせつらちゃんだって分かったわけじゃないの?」
「はい。でも、もういいんです―――。
昔の事、思い出してくれなくても、もう一度私のこと好きになって、
それでずっと私の傍にいてくれるなら―――、
もうそれで」
「へぇ〜〜、でもあの子とはちゃんと別れるんでしょうね。
二股は許さないわよ」
「あは……、、飛鳥はそんなことしないと思う…。
飛鳥、ほんと、昔の飛鳥のままだったし……
でも……」
「―――?」
「あはは……」
「でも、何?」
「でも、一緒にいられるなら二股でもいいかな、なんて」
「ふぅん……」
「あの、怒らないんですね……」
「呆れてものが言えないのよ」
「あはは……、、
あの、歌織さん、さっきわざと気配出しましたよね……?」
「うん、せつらちゃんが公衆の面前で破廉恥な行為に及ぼうとしてたから〜〜、
良識ある大人としては止めなきゃいけないかなぁって〜〜〜」
「ううっ―――…………」
真っ赤になったせつらをからかっていた、歌織がその眉を顰めた。
違和感を感じたのだ。
「あれぇ―――……、
これ……、、弟クンの差し金かなぁ―――?」
それはせつらも同じだった。
周辺から生き物の気配が消えていく。
いつの間にか張り巡らされた、強大な固有結界――――――
「飛鳥じゃないと、思います」
「じゃああの女の方、か―――。
いずれにしても決着はつけないと駄目な相手よね―――。
って、腕、まだ治ってないよね?
剣、握れる?」
「ううっ、無理です―――…」
「退いてって言って退いてくれる相手でもなさそうだし、
なら、私が闘るしかないか」
「ごめんなさい、歌織さん……、、、。
お願いしてもいいですか?」
「気にしないで、可愛い弟子を護る為だもの」
歌織はにっこりと笑顔を浮かべた。
程なくして刹那と歌織の前に、鬼と化した呂久斗を従えた、羅城せつらが現れた。