ガツッ―――――!!!











振り下ろされた闇の剣を―――、歌織の神楽―カミクラ―が受け止めていた。










「歌織―――さん……?」





せつらが呆けた声で呟く。

一方、受け止めた歌織は苦痛に顔を歪ませる。
支えきれず、がっくりと膝をつく。





「はぁっ―――、はぁっ……、

 せつら……ちゃん……、もう、いいよ―――、、

 名前も―――……、取り戻した

 弟クンも―――……、帰ってきた。

 貴女の勝ち―――、、、

 もう終わった―――……、、んだよ……、、」





殆どひざまずいているかのような格好で、歌織は言葉を紡いだ。
その顔に生気は無く息は絶え絶えで、その目が見えているのかすらあやしい。

しかしその声が聞こえているのかいないのか、せつらは動かない。





「せつらちゃん……、おねがい、その剣をしまって―――」





歌織の言葉に、せつらは唇を噛みしめた。
そしてその柄を握り直す。





「まだ……、終わってない……。
 その女を斬らなきゃ―――、終わらない」



「もう、終わってるんだって―――!!
 その剣で彼女を斬ったらどうなるか分かってるのっ―――!?」





叫ぶのと同時に歌織は血を吐いた。
その顔は蒼白で、もはや生きているのが不思議なくらいだった。

腹からは大量の血を流し、服は真っ黒に染まっている。





「どう、なるの……?」



「とぼけないで。
 せつらちゃん、貴女、その力がどこから来てるか分かってるんでしょ……?」



「………………」



「私はあなたに自然を感じるように教えた―――、
 でもせつらちゃんが覚えたのは自然と1つになることじゃない。

 げほっ、げほっ―――……、、

 あなたは―――……、大地のエネルギーを吸うことを覚えてしまった……。

 私はそれでも構わないと思った…。
 相手は人あらざる者―――……、、
 だから、私は、大地がせつらちゃんに味方したんだって、そう、思ったから―――



 でも―――……」





「…………?」





歌織の額にいくつもの汗が伝う。





「見なさいっ――――――!!!」





彼女は剣を支えていた手を放し、拡げた。










世界は色を失っていた。










せつらの足元から世界が変わっていた。


土は死に、芝生は枯れ、うららかな春に豊かな緑を湛えていた公園の木々がその葉を落としている。





世界が――――――





灰色に染まっていく――――――――――――










「その剣は無尽蔵に、この星の命を喰らい続けているのよ―――!!!


 はぁっ、はあぁ―――、


 私たちの命を育んでくれるこの自然こそ、神―――、あなたはその命を―――……、、、」





血を吐き、俯き、倒れかけた歌織を、せつらの一振りが弾き飛ばす。





「終わるよ―――歌織さん。
 その女を斬れば―――――――――全てが」





が、歌織は再び起き上がる。





「残念だけど―――……、
 彼女を斬った剣を、あなたが捨てられる、という保証がない、せつらちゃん」





「でも、止まらないよ―――、この子は、
 あの女を斬るまでは―――」










せつらが柄を握り直す。





歌織もまた。














歌織は立ち上がった。





その腹から大量の血を流しながら、




今にも消えかかっている神楽―カミクラ―を構える。










「なら、私が止める。
 
 神楽は神を護るために生まれた剣――――――」







「歌織さんは、その女の味方をするの……?」







「私はあなたの味方よ、せつらちゃんっ―――!!!


 その力はあなたを滅ぼす―――!!


 だから、たすけるっ―――――――――!!!」










せつらが歌織を睨みつける。










ドッ―――――――――











その体から暗黒の氣が噴き上がる―――、



それだけで、歌織は耐えきれず、よろめき、無意識に出した足が辛うじて倒れそうな体を支えた。










せつらが苦笑する。





「残念けど―――、歌織さんじゃ、私には勝てないよ―――……」





歌織はその言葉に笑顔で応えた。































「ラクサラ、私に力を貸して……」



「え……?」



「あの子に、あなたの力は効かない、、、分かってるでしょ―――」



「な、なぜ、お前が、、この私をたすける……」



「あなたが弱いからでしょうっ!! 早く―――――――――!!」



「…………、、、

 しかし私にはもうあの娘を止める必要など―――無い。

 私はもう、疲れた。 

 あの娘が、私の最後の望みを叶えてくれるだろう――――――、全ての滅びを」





「ふざけないで―――!せつらちゃんは諦めない―――!
 決して諦めないっ!!!

 貴女もっ、貴女も、最後まで戦いなさいっ―――!!

 まだ彼の魂が、失われたわけじゃないんでしょう―――――――――!!!!」





ラクサラは目を瞠った。


目の前で、今にもその命の灯火を消そうとしている女は、なぜ、



なぜ、彼女の魂はこうも激しく、美しく輝いているのか―――……



哀しみを背負い、



既にその人生に絶望を抱いているはずの彼女が、なぜ、










ラクサラは、ゆっくりと、その腕をあげ、歌織へとむけた。



力が、歌織へと流れ込む。



その腹の傷を塞ぎ、その生気を回復していく―――……




















その間にせつらは飛鳥を締め付ける光の束縛を切り裂いていた。





「飛鳥は、私の味方をしてくれるよね―――?」





「ぐおううっ―――ううっ、、、…………、、、、」





殆ど人としての意志を失いかけていた飛鳥が、せつらの声にかろうじてその意識を取り戻す――――――





しかしその二人の前に、歌織が立ちはだかる。
その足取りは確かだが顔は蒼白なままだ。





「弟クンも、せつらを止めて!

 本当に彼女を愛しているのなら、協力しなさい――――――!!」










ラクサラを庇うようにして立つ歌織、





魔剣を手にしたせつら





飛鳥は状況を飲み込めないまま





戦いは始まる。



















































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