夕食の後、実花は自室で明日の予習をしていた。
すでに風呂も入って、寝るばかりである。
――寝ておけばよかったと、すぐに後悔することになるのだが。
ドンドンと部屋のドアをノックと言うか、乱打されて、実花は反射的に叫んでいた。
「イヤッッ!」
しかし、叫んで振り向いた時には、すでに風呂上りの神谷がドアを開けて立っていた。
パンツ一丁で首にはタオル、と言ういでたちはいつもの通りであるが、今日のトランクスは派手な赤地に黒のスヌー○ー柄である。
かっとんだパンツしか所持していない神谷にしては、かなりまともな部類のパンツだ。
いや、そんなことはどうでもよくて。
「イヤッて言ってるでしょ!? 出てってよーっっ!!」
夜だと言うのに実花は絶叫する。遠くで母親が注意している声が聞こえるが、知ったことではない。
そして、神谷もどこ吹く風だ。
首にかけたタオルの端で、まだ水滴滴る髪を拭きながら、言う。
「いいじゃねえかよ、別に。まだ寝ねえんだろ」
「寝るわ、今すぐ寝るから出てって!」
実花の叫びはかなり、『そんな無茶な』と言う域に達していたが。
困ったことに、慣れている兄は端にも引っ掛けてくれない。
「いいじゃねえかよ、すぐ終わるから…」
などと言いながら、お目当ての全身鏡の前に立った。
そして。