こんなはずじゃなかった。
 出来ないはずがなかった。
 田仲が抜けても、俺が抜けても。
 まだ『掛川』のサッカーが出来るはずたった。
 そんなヤワなチームを作ったつもりはなかった。
 誰かに依存しなければいけないようなチームを。
 それは、命取りだ。
 いつ、誰がいなくなるかなんて、分からない。
 自分じゃ、ちゃんと残しているつもりだった。
 でもそれは、幻だったのか。
 久保が残したものと、俺が作ったもの。
 それは似ていても、違うもののはずだ。
 そして違っていても、目指すところは同じだったはずだ。
 その両方を、全員が身につけたのではなかったか。
 誰も俺にはなれない。俺が他の誰かになれないように。
 どんなに望んでも、俺が、久保にはなれないように。
 俺が抜ければ、俺がいないサッカーしかできないだろう。
 けれど、全員がそれぞれの力を発揮すれば、新しい、けれど確かに『掛川』のサッカーが出来るはずだった。
 だけど…。





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