さて、そんな訳でいったん外へ出た芹沢であるが、それこそ目的もなく出て来た芹沢にやることがあるはずもなく、ただ寒いだけだった。昼間ならレクリエーション施設も使えるのだが、夕食も終わったこんな時間では、サッカーぐらいしか出来ることもないだろう。
「もう一度、風呂でも入ってくっかな」
 芹沢は、自分の呟きで肩を震わせた。
 ふと、この合宿所に自分の居場所はないのではないかと思えたのだ。そして、それが理不尽だと感じていた。
 以前の芹沢ならそんなことは気にも止めなかっただろうが、自分の内面が微妙に変化し始めていることに、芹沢はまだ気づいていない。
 そんな芹沢の耳に、遠くでボールを蹴る音が聞こえた。よくよく見ればサッカー場の方が明るい。誰かが自主練をしているのだろう。
 そう気がついた瞬間、何か考えるよりも早く、芹沢の足はサッカー場へと向いていた。






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